魔界に鎮座する東嶽大帝は、自分の4人の息子悪魔王子バルバドス達と娘のリリスを呼び、悪魔界は完全に自分の手に 落ちたと高らかに宣言した。 この追い風モードを逃してなるかと言うようにバルバドス達にインドの四賢人、中国の八仙人を倒すよう命じ、 更に強大な魔力を使い天上の光を遮ってしまう。 遂に今更ながら東嶽大帝自らが動き出したのだった! 天上の光が遮断された影響は全世界に及び、善良な白悪魔が次々に倒れていった。 助けを求める声が魔眼を通して見えない学校にひっきり無しに届いていたが、見えない学校内でも妖虎が急に倒れてしまう。 ピクシーの薬も効かない事を聞いたファウスト博士は、これは崑崙山の天上の光が遮断されてしまった為、 中国出身の妖虎の魔力が弱まったせいだと判断した。 しかもこのままだと全員の魔力が無くなってしまうという恐怖の予言に全員動揺の波が巻き起こる。 見えない学校がパニックに襲われている中、悪魔くんの学校では音楽発表会が催されていた。 弦楽器が荘厳な音楽を奏で、かなり本格的な雰囲気。 その舞台袖では、出番を待っていたエツ子が緊張した面持ちでアルトリコーダーを握り締めていた。 プレッシャーに耐えているかと思いきや、この舞台がきっかけとなって芸能界デビューを果たし、美少年組と共演したりしてー! とありえない妄想に浸っていた。大物です。 しかし、そんな乙女の甘酸っぱい野望は、バルバドス達によってあえなく打ち砕かれる事に。 バルバドス達は発表会会場客を全員眠らせた後、エツ子と貧太、情報屋、そしてなぜか司会を務めていたキリヒトを捕らえ、 悪魔くんの命を狙う作戦に出たのだった。 エツ子達人質4人と共に体育館屋上に上がったバルバドス達は、魔眼を通して悪魔くんにソロモンの笛を渡して降伏するよう要求した。 「選択の余地は無い。1時間経つ毎に人質を1人ずつ殺す。まずは・・・エツ子からだ!」 バルバドス達は悪役王道まっしぐらな要求を言うだけ言うと魔眼にヘドロを吐きかけ通信を切断し、通告を終了した。 砂嵐となったモニターを前に苦悩する悪魔くん。 「何やってるんだ、早くエッちゃん達を助けにいこうぜ!」 メフィスト二世は促すが、悪魔くんは今助けに行けば、東嶽大帝の思うツボだ、と苦悶しながら迷いの言葉を出す。 「・・・バカヤロー!」 悪魔くんの頬にメフィスト二世の鉄拳パンチが炸裂! 番組始まって以来の大暴挙にユルグ、サシペレレ、こうもり猫がメフィスト二世を取り押さえる! 「見損なったぜ!エッちゃん一人助けられない悪魔くんに世界が救えるか!」 「悪魔くんだって辛いのよ。肉親だもの、まっさきに助けに行きたいはずよ。」 と諌める鳥乙女の言葉にも耳を貸さずに 更に悪魔くんを非難する。 「俺たちは、悪魔と人間が仲良く暮らせる平和で幸せな王国を築くために戦ってるんじゃないか! ここでエッちゃんや貧太君達を、見捨てたり出来るか!」 メフィスト二世の言葉に、百目や泣き出していた幽子も4人を助けに行こうと言い始めた。 更に、 「その通りじゃ、悪魔くん。」 妖虎が杖に縋りながらやってきた。 「及ばずながら力を貸すぞ。」 「妖虎・・・皆・・・あ、ありがとう・・!」 皆の心は一つ!見えない学校は悪魔くんの学校目指して出発した! 見えない学校で熱いドラマが展開されていた頃、フランネールは一人空を急いでいた。 仕えていたインドの四賢人がやられてしまい、もはやこの人しかいないと何故か視鬼魅の力を貸りようとしていたのだ。 全速力で人魂を飛ばし、ようやく天狗の寝所にたどり着いたフランネールは土に埋まった入り口を掘り進み、 アニマムディの魔鏡が安置されている部屋までたどり着いた。 「視鬼魅様、何とぞお力をお貸し下さい・・・!」 一方日本では、見えない学校が体育館上空までやってきた。 降伏しろと言うバルバドス達に一斉に鼻息荒く言い返す十二使徒。 しかしバルバドス達はイヤ気な笑いを発し、懐から鉱石に封印された四賢人と絵封じされた八仙人を取り出した。 「こりゃーとても敵わないでヤンスよ。よく考えましょうねぇみんなぁ。」とキレの良い弱腰っぷりを見せるこうもり猫。 その時ファウスト博士が魔煙を出し、バルバドス達を包んだ! 今のうちだと十二使徒が一斉に飛びかかろうとするが、 黒悪魔というよりウルトラ怪獣のバルバドスその4が 魔煙を平らげてしまう。 魔煙も通じない・・・。このままではエツ子達は・・・。 悪魔くんは手を強く握り締めて叫んだ。 「僕は・・・誰も犠牲になんかしたくない!」 そして、「メフィスト二世、僕をバルバドスの所へ連れて行ってくれ。」 涙を堪えながらメフィスト二世に頼んだ。 「お願いだよ・・・!」 「・・・分かったよ・・。」 悪魔くんの決意の固さを感じたメフィスト二世は目をこすり、泣く泣く悪魔くんを乗せ体育館屋上に飛んだ。 十二使徒が不安げに見守る中体育館屋上に立った悪魔くんは、ソロモンの笛をバルバドスに渡し、エツ子達を放すように言う。 が、 純然たる悪役のバルバドスは悪魔くんの命を奪ってからだ、と武器を構えながら言った。 「ひ、卑怯な・・!」 が、その時、倒れていたエツ子がバルバドスの顎に垂直回転キックを炸裂! 妹の超必殺技に唖然となる悪魔くん。 だが勿論エツ子が格闘家になった訳ではなく、 先程の魔煙に紛れてサシペレレが入れ替わっていたのだ。 本物のエツ子と三人組はヨナルデが予想もつかない俊敏さを発揮して三人を救出済み。 人質がいなければ遠慮は無用!残りの使徒達も一気に体育館屋根に降り、戦闘開始! だが、天上の光を失い充分な力を発揮できない十二使徒達と分身の術を使うバルバドス達ではあまりに力の差がありすぎた。 妖虎が「ワシはもう駄目じゃ、魔力が・・・。」と今際の際のような台詞で倒れたのをはじめ、 全員があっという間に倒れてしまう。 悪魔くんは最後の手段、ソロモンの笛を吹き始めた。 『笛よ・・・平和を願う僕の想いを、全ての世界に届けてくれ・・・奇跡を起こしてくれ!』 悪魔くんの笛の音は、世界中に響き、天狗の寝所のフランネールの呼び掛けではぴくりとも動かなかった 視鬼魅にも届いた。 「魔鏡よ、天上の道を開き、その光を再び溢れさせよ。」 視鬼魅の手のアニマムディの魔鏡が天を照らすと、どんよりとしていた天上界に光が溢れ、地上にも光が戻った! 同時にバルバドス達は魔力を失い、一斉に苦しみだす。 バルバドス達が弱体化した為封印が解け、囚われていた四賢人、八仙人も解放された! 「天上の光が戻った今、お前達には勝ち目はない。韓相子(かんそうし)、逆封じじゃ。」 そして 有利な立場だとトコトン強気の八仙人により、バルバドス達はあっという間に絵の中に封じ込められたのだった。 暗雲も晴れ、おいしい所は八仙人に取られたものの、事件も解決して一安心する悪魔くん達の前に、 フランネールと共に視鬼魅が人魂に乗って現れた。 視鬼魅は、東嶽大帝の本拠地が東嶽廟の地下の魔空間にある事を、天上の神々がアニマムディの魔鏡を通して伝えた事を 話した。 天上の神々は土壇場まで情報を出し惜しみしていたのかという疑問が頭を過ぎるがその時、 ファウスト博士が唐突に自分の役目はここまでだ、後は自分達だけで見えない学校を動かし戦うのだと言った。 このメガトン級の爆弾発言に十二使徒全員が動揺するが、唯一自分を見失わない悪魔くんは 「分かりました、今度はこちらから攻めます!」と強い口調で言った。 悪魔くんが家獣に乗り込もうとする時、エツ子が不安気な声で呼んだ。 「お、お兄ちゃん・・・。」 「エツ子、僕は行かなくてはいけないんだ。でも、東嶽大帝を倒して必ず帰ってくる。」 涙ぐむエツ子は奥の二人に目を向けた。 「百目ちゃん、メフィスト二世さん・・・。」 「エッちゃん、笑って!泣いちゃヤだもん!」 「今度は、エッちゃんにラーメン作ってもらうから、なっ!」 「・・・・うんっ・・。」 涙を堪え、エツ子は頷いた。 そして何事も無かったかのように発表会が再開された。 体育館にエツ子のリコーダーが響き渡る。 そして同じ時、悪魔くんもソロモンの笛を吹き、魔空間を目指すのだった・・・。 目次に戻る |
東嶽大帝との最終の決戦を行う為、悪魔くんは見えない学校を操り東岳廟へと向かっていた。 恐らく今までで最も苛烈な戦いになると思われるが、こうもり猫が「武者震いでガンスからねっ!」とブルブル震えている以外は 「悪魔くんも、大分上達したみたいだな。」 「揺れも少ないし、快適だもん!」 「いやあ、見えない学校が自分から動いてくれているんだよ。」 と、妙に和やかな雰囲気。 そんな鋼の平常心の強者達を乗せた見えない学校は、東岳廟に到着した。 東嶽大帝が全世界制覇を狙う大魔王へと華麗なる転身を遂げる前、神々に仕えていた頃に治めていたのがこの東岳廟だった。 かつては光溢れる荘厳な中華風建物が並んでいただろうが、今は光も差し込まない荒れ果てた世界が広がっている。 しばらく行くと魔空間の入り口が見え、見えない学校は一気に突入した! 魔空間を抜け、見えない学校は、東嶽大帝の本拠地悪魔城前に逆さになって到着した。 その途端、悪魔城の門が開き、悪魔竜ヒュドラが現れた! ピクシー、幽子、百目、こうもり猫が鳥乙女にしがみつく程の迫力を持ち、メフィスト二世が「へっ、ぶっさいくな奴!」 とストレートな感想を口にする程の姿を持つヒュドラは、その数多の頭を全て見えない学校に向けて口を開け、弾を発射した! 「避けるんだ、見えない学校!」 見えない学校は回避しようとするが、弾のいくつかが魔眼部分に当たってしまう。 迎撃する為外に出たメフィスト二世が見上げると、その部分が腐食したようになっていた。 ヒュドラの首を何とかしないとまずい! しかしガミジンとグレムリンが大挙して現れ、ますます形勢は不利になってしまう。 しかしそれに怯む事無くヨナルデ以外の全員が出撃し、見えない学校は戦場となった。 壁をガンガン食べ進むグレムリンを鳥乙女のピンクハリケーンで吹き飛ばし、 襲いかかるガミジンをユルグの狐火で焼き払う。 百目がグレムリンを棒でボコボコ叩くも全く効いていなかったり、 メフィスト二世が妖虎の炎でレア焼きになったりしながらも全員必死で戦っていた。 だが、多勢に無勢の上に、ヒュドラの吐き出す弾の被害があまりにも大きい。 幽子が照魔鏡で弾を吸収し、被害を押さえようとしているが、それがいつまで持つか・・・。 鳥乙女はきっ、とヒュドラを見据え、 「ピーンク、ハリケーーン!!」 鳥乙女目掛けて発射された弾を引き寄せながら、ヒュドラへ特攻をかけた! 鳥乙女はヒュドラの首をすり抜け、誘導した弾で次々と首を潰していく。 しかし、最後に残ったヒュドラの顔が鳥乙女に喰らいつこうと大口を開けて迫る! が、 「鳥乙女、危ないでヤンス!」 こうもり猫が間一髪で鳥乙女を抱きかかえ、噛み砕こうとするヒュドラの口を手で支えた! 今にも潰されそうになるのを、目を血走らせ、歯を食いしばり、必死に耐えるこうもり猫。 「さっさとあたしを離して逃げなさい、こうもり猫っ!」 鳥乙女の言葉にも答えず、渾身の力で支え続ける。 「離しなさい、こうもり猫!」 こうもり猫は涙を浮かべながら、鳥乙女を見、そして声を限りに叫んだ。 「いやだーー!!」 こうもり猫の叫びに答えるように、見えない学校の生命玉が赤く輝き、ヒュドラに向かって赤い稲妻を発射! 稲妻をまともに浴びたヒュドラは一瞬で石化し、間一髪で脱出した鳥乙女とこうもり猫が見つめる中、奈落へと落ちていった。 「すごいぞ、見えない学校・・・。」 初めて見る見えない学校の破壊力に驚きを隠せない悪魔くん。 だが、この襲撃は始まりにすぎなかった。 ガミジンとグレムリンを除去して扉をくぐると、砂漠の海が広がっていた。 「何が出てくるか、分からんぞ。」と言うユルグの言葉に答えるように、砂漠からジュラタンが現れ、 見えない学校に這い上がりはじめた。 更に炎の柱の中から現れた大蛇 ゼーオルムが、その巨体を見えない学校を巻きつける! ジュラタンの進撃は止まるところを知らず、壁をすり抜け、遂に悪魔くんのいる司令室まで到達してしまう。 戦闘力ほぼ皆無のヨナルデと人間の悪魔くんでは、限りなく瞬殺されてしまう可能性大!悪魔くん、危うし! しかし家獣が現れ、ジュラタンをちぎっては投げちぎっては投げし、ジュラタン駆除を開始! 外でもユルグが負傷しながら狐火でジュラタンを焼き払う。 ジュラタン退治は順調だが、ゼーオルムが超高熱を発しながら、見えない学校を締め上げ始めた。 「見えない学校!くじけちゃ駄目だ!」 その瞬間、見えない学校の生命玉が大きく輝き、ゼーオルムの口に飛び込んだ! 口から入った生命玉は、ゼーオルムを燃やしながら突き進み、最後に尻尾を突き破って再び見えない学校の頂上に収まった。 「ジュラタンは皆やっつけたもん・・・。」 百目に倒せたのかは謎だがジュラタンも全員駆逐し、見えない学校は東嶽大帝目指して更に進む。 しかし、瓦礫の中から巨大な戦艦が現れた。 「見えない学校よ!この幽霊船 サルガッソーが相手だ!」 リリスがわざわざ艦内司令室から甲板に出てきて悪魔くん達を出迎える。 三度訪れた強敵。しかしこの大事に、見えない学校は突然行動を停止してしまう。 「どうなっちゃったんだ、見えない学校!こんな時に昼寝なんてー!」 ちょっと違う気もするこうもり猫の言葉だが、生命玉も光を失い、プロペラも閉じてしまった見えない学校を、 十二使徒達は不安げに見上げる。 「皆、勇気を出すんだ!僕達の勇気で、見えない学校を支えるんだ!」 悪魔くんはソロモン王仕込みの勇気至上主義論で十二使徒達を励ます。 悪霊砲は相手のエネルギーと比例して爆発する。直撃すれば見えない学校は跡形も無くなるだろうと得意げに言うリリス。 そしてサルガッソーに付いている巨大な顔の口が大きく開く。 「打てーー!」 青白く光る悪霊砲が発射され、見えない学校に直撃! 見えない学校は悪霊砲に真中を貫かれ、ボロボロになってしまう。 「形が残っていただけでも、奇跡よ!」勝利を確信してリリスが言う。 しかし、あたりの様子がおかしい。 突然雷が鳴り響き、嵐が発生し始めたのだ。 実は、悪霊砲を撃てば、巻き込まれれば魔空間と現実空間の狭間で永遠に彷徨う事になってしまう空間乱気流が 発生してしまうのだ。東嶽大帝はそれを知りながらリリスを出撃させたのだった。 次第に大きくなる嵐、しかし見えない学校は全く動かない。 「目覚めてくれ、見えない学校!」 悪霊砲が間近で爆発したのに無傷の悪魔くんと十二使徒は六芒星を描き、見えない学校に力を送り、 その力を受け、魔眼の目が開く! 見えない学校は悪霊砲を防ぐ為、全ての力をストップさせ、仮死状態になっていたのだった。 言葉のコミュニケーションが無い為無駄に心配してしまったのだが、とにかく見えない学校は飛び立ち、 危機は回避された。 だが、リリスは・・・ 「ちちうえーー・・・!」 父親に利用されただけと知る事も無く、断末魔の叫びと共に空間乱気流の中に消えていった・・・。 空間乱気流の及ばない所まで来ると、力尽きたように着陸する見えない学校。 「頑張ったね、見えない学校・・・。」 満身創痍の見えない学校に大きな影が落ちる。 全員が見上げると・・・そこに、東嶽大帝がいた。 見えない学校が小さな置物に見える程の巨大な東嶽大帝と、悪魔くん達の、最後の戦いが始まった瞬間だった。 目次に戻る |
戦いは最初から苦戦だった。 東嶽大帝は、その圧倒的な魔力で悪魔くん達の生命エネルギーを全て奪い尽そうと吸収し始める。 それでなくとも今までの戦いで精根尽き果てようとしていた悪魔くん達にこの攻撃は厳しすぎるものがあり、 皆動く事も出来ず苦痛の声を出すしかできなかった。 そして遂に、一番深手を負っていた見えない学校の生命玉の光が消えてしまう。 「野郎・・・!敵はとってやるぜ、見えない学校!」 弔い合戦とばかりに再び戦意を奮い立たせて戦おうとするが、東嶽大帝の一息で吹き飛ばされてしまう。 「ど、どうやってあいつと戦えってんだよ!第一、俺達の魔力なんか通じやしねーべ!」 あまりの力の差に白旗気味のこうもり猫、しかしユルグは 「忘れちゃ困るぜ、こうもり猫!俺達は何の為にシバの神殿に行ってきたと思ってるんだ。」 悪魔くんも併せて言う。「そうだよ、今こそ究極の六芒星を使うんだ!皆、位置について!」 十二使徒達は力を振り絞り、六芒星の位置につこうとするが、それをのうのうと見物する東嶽大帝ではなかった。 集まりはじめた十二使徒を吹き飛ばして悪魔くんを捕らえ、生命エネルギーを奪い始めた! 東嶽大帝は苦しむ悪魔くんに、今この力は四界を覆いつくし、自分が四界の支配者となるのだ、と優越感に浸りながら言った。 「よく聞け、東嶽大帝!どんな強力な力だって、悪の力で世界を支配する事なんて、決してできないんだ!」 生命エネルギーをじわじわと奪われながらも強い口調で叫ぶ悪魔くん。 だが、東嶽大帝はそんな事はくだらん夢物語だと一笑に付す。 「夢も信じれば叶う!だから・・・だから僕達は、今まで戦ってきたんだ!」 そんな悪魔くんにいらだった東嶽大帝は「ワシの力がまだわからんようだな!」と言うと悪魔くんをぶんぶんと振り回し、 地面に叩きつけた! 悪魔くんは常人だったら即死な程の衝撃に立ち上がることもできず、ソロモンの笛が吹き飛んでしまった事にも気付かず 呻くのみだった。 その頃人間界の天狗のねぐらでは、八仙人・四賢人とフランネール、視鬼魅、そしてファウスト博士とついでのガハハ三人組が アニマムディの魔鏡を通して蓬莱島が大きく振動している様子を見つめていた。 「ここまできては、ワシ達にはもう何もできん。」 「この危機を救えるのは、悪魔くんしかおらんのじゃ!」 仙人はお得意の言葉を呟き、ファウスト博士も悪魔くんに希望を託す。 「そう、あの子しかおらん!頼むぞ、悪魔くん!」 そして埋れ木家前では、エツ子と三人組がどんよりと曇った空を見上げていた。 「何だか、嫌ーな予感がするわぁ・・。」 「ひょっとして、世界の終わりなんでしょうか?」 キリヒトの縁起でも無い言葉に情報屋は「悪魔くんが東嶽大帝なんかに負ける訳ないよ!」と言い、 貧太も「僕たちは何にもできないけど、せめて悪魔くんを信じようよ!頼むぞ・・悪魔くん!」 と友人の鑑な言葉で不安を打ち消していた。 皆がそれぞれの場所で悪魔くんの勝利を祈る中、悪魔くんは再び東嶽大帝に戦いを挑もうとしていた。 しかし、ソロモンの笛がなくなっている事に気付く。 「大切な、ソロモンの笛が・・・」 ショックで緊張の糸が切れ、力尽き倒れこんでしまう。 『ここで、あきらめたら・・・全てが終わってしまう・・・でも、でも、ソロモンの笛が・・・!』 『悪魔くん。君の勇気とは、ソロモンの笛に頼らければならないものなのか』 ソロモン王の言葉が蘇ってきた。 『悪魔くん、君の仲間である十二使徒達は、魔力を無くしても勇気を失わなかった。それこそ、真の勇気』 「夢を・・・実現させなくちゃ・・!」 その時、息絶えたかと思われた見えない学校から涙があふれ、青い光が悪魔くんに注がれる。 すると、悪魔くんの体に力が蘇った!見えない学校が最後の力を悪魔くんに注いでくれたのだ。 「今度こそ、永遠の闇の中に送り込んでやる!」 東嶽大帝が攻撃するが、ソロモンの笛を繋いでいた十二の玉が飛来し、悪魔くんの周囲で回転して悪魔くんを守った! 「まるで、あたし達十二使徒の代わりをしているようだわ」 「ワシらも負けてられないゾー!」 十二使徒が悪魔くんの周りに集まるが、怒り心頭の東嶽大帝が全員まとめて葬り去ろうとする。 しかし、その足元が黄金色に輝き、東嶽大帝の目をくらました! その光は凝縮して形をとり、ソロモンの笛に! ソロモンの笛は東嶽大帝を攻撃しながら悪魔くんの手元に帰っていく。 「ソロモンの笛!」 「悪魔くん、今だ!」 十二使徒達が六芒星の位置についた! 悪魔くんはソロモンの笛を吹き始めるが、その時、疲れがピークに達した百目が倒れてしまう。 「何やってんだ!早く立たないか!ドジ!馬鹿!百目!」こうもり猫に叱咤を浴びせかけられながら立ち上がろうとするが、 精根尽き果て再びべちゃっと大地に体をつける百目。 思わず駆け寄ろうとした幽子をメフィスト二世が止める。 「動くな、幽子!俺達が信じ合わないで、どうして究極の六芒星が出来るんだ!本当の仲間なら、百目を信じるんだ!」 「頑張って、百目ちゃん!」 「もう少しよ!」 「百目、根性、根性でヤンスよ!」 「悪魔くんも俺達も、最後の力を振り絞ってるんだ、だから・・・だから、お前も・・立て!百目!立つんだ、百目!」 十二使徒は涙を流して応援する。そしてソロモンの笛を吹きつづけている悪魔くんも又、心の中で応援していた。 皆の気持ちに支えられるように、百目は・・立った! 「僕、頑張ったもん、悪魔くん・・。」 十二使徒の心が一つとなり、究極の六芒星が発動する! 「僕達の夢よ、希望の星となって輝け、究極の六芒星!」 天空に浮かんだ黄金の六芒星は東嶽大帝を飲み込み、その強大な力で東嶽大帝を宇宙の塵と化した。 「やったぜー!遂に東嶽大帝を倒したぞ!」 喜びにわく一同。そして究極の六芒星の力により復活した見えない学校に乗り、全員無事に帰還したのだった。 しかし・・ 「どうして、博士!なぜ、皆が別れなくちゃいけないの?!」 ファウスト博士は、全員出身地に戻り、人間と悪魔が仲良く暮らせる世界を作るという使命を達成する為 働かなくてはいけないと言った。 「でも僕、悪魔くんや皆と別れるのいやだもん!」 「あたしだってそうだわ!」 「アッシだって、もう勉強しなくてすむのは嬉しいけど、このまま別れちまうなんて寂しすぎるじゃねえかよ、チクチョー!」 一斉にブーイングする中、メフィスト二世は 「みっともねーぜ!それでもテメーら一人前の悪魔なのかよ! 東嶽大帝を倒すことができたのは、悪魔くんや俺たち皆の心が一つになったからだ! そいつは、これからも、たとえどんな事があろうと、変わりはしねえ、そうだろ皆!」 涙を堪えるメフィスト二世を見て、皆涙ながらに納得する。 そして、悪魔くんはファウスト博士にソロモンの笛とメフィスト二世から貰ったふろしきマントを返し、皆に別れを告げた。 「エッちゃんによろしくな、悪魔くん!」 「さようなら、悪魔くん。」 「お達者で、悪魔くん大先生、大明神、イヨッ大統領!最後のヨイショでヤンスよ、ヨイショ、あドッコイショっと!」 「元気でね、皆!見えない学校、君にもさよなら!」 「そして・・・ありがとう」 その後、十二使徒は・・・。 第一使徒 メフィスト二世は 故郷のヨーロッパに戻り、オープンカフェで親子揃っていつものようにカップラーメンを食べていた。 「エッちゃん、ラーメン、美味かったよ!」 第二使徒 ユルグは 故郷のアフリカに帰り、壮大な夕焼けを見つめていた。 「美しい・・・。」 第三使徒 ヨナルデ・パズトーリは メキシコの町中で、子供たちに講義していた。 「であるからして、そう言う訳なんだわさ。」 第四使徒 幽子は 日本で子供たちと縄跳びをして遊んでいた。 第五使徒 ピクシーは ギリシャで今日も怪我人を治療していた。 第六使徒 百目は 日本で母子を襲っている野良犬を撃退していた。 第七使徒 妖虎は 中国でも相変わらず酒を愛でていた。 「わが大地よ・・。」 第八使徒 家獣は 南国の島に行き、動物達と戯れていた。 第九使徒 象人は インドに帰り、バナナを盗んで逃走中。相変わらず食欲に忠実であった。 「あ、ゾーもゾーも。」 第十使徒 鳥乙女は 両親の生地イースター島には行かず、 生まれ故郷であるナスカ高原に帰り、微笑みながら自由に大空を飛びまわっていた。 第十一使徒 サシペレレは サッカーチームのメンバーの待つブラジルに戻り、今日も竜巻大回転シュートを決めていた。 「竜巻大回転キーック!」 第十二使徒 こうもり猫は イタリアに行き、フーテンルックで頭蓋骨の叩き売りという胡散臭まりない商売をしていた。 「シャレにもならないしゃれこうべ、ヨイショ!」 共に戦い導いてくれたファウスト博士は 見えない学校を一般公開し、その案内役を務めていた。 そして、悪魔くんは・・・ 夕暮れ時、古寺の裏の丘でエツ子や三人組と共にいた。 「お兄ちゃん、百目ちゃんやメフィスト二世さんとはもう二度と会えないのかしら?」 「会えるさ!いつか悪魔と人間が仲良く暮らせるユートピアを築く事が出来た時、きっと!」 その言葉に答えるように、背後から懐かしい声がした。 「あっくまくーん!」 「ひゃ・・・百目!」 「帰ってきちゃったもーん!」 「こいつ!」 喜びの涙を浮かべながらウインクする悪魔くん。 「悪魔くーん・・」 「悪魔くーーん・・」 呼び声が聞こえ、悪魔くんはハッとして振り返った。 大きく輝く夕日の中で、十二使徒達が微笑みながら手を振っていた。 離れていても、心は一つだと笑顔が言っていた。 「みんな・・・。」 潤んだ眼で夕日を見つめる悪魔くんの顔にも、笑みが浮かんでいた・・。 エロイム エッサイム、 エロイム エッサイム 我は求め 訴えたり 夢よ、届け君の心に・・・。 終わり 目次に戻る |