場所はアメリカ、高層ビルが立ち並ぶ大都市。 その一際高くそびえ立つビルの最上階では、ロソンコンツェルン会長ロソンが きわどいスリットスカートにマントとどう見ても秘書とは思えないいでたちの秘書のリリスに ビジネススケジュールを口述させていた。 しかしロソンは、分刻みのビジネススケジュールをつらつらと報告するリリスを腹立たしげに遮ぎると、世界各国の黒悪魔の 働きぶりを尋ねた。 実は世界に誇るロソンコンツェルン会長とは仮の姿。 秘書の姿からして普通でないロソンの正体は世界支配を狙う黒悪魔なのである。 会長が悪魔なら秘書も当然黒悪魔。 リリスは手にしたメモを見ながら、日本ではロソンコンツェルン主催の世界不思議博覧会が大成功を収め、 千年ガマのゴモリーも着々と成果を上げていると報告した。 その報告を聞きニヤリと笑うロソン。 「やがてこの世界が私のものとなる。人間共の手から・・・。」 会話の中に出てきた世界不思議博覧会とは、最近奥軽井沢にオープンした博覧会で、 その名の通り不思議な建物やパビリオンが立ち並び、連日大勢の観光客で溢れかえっていた。 そしてその観光客の中には、漫画の取材の為に訪れた埋れ木父の姿もあった。 埋れ木父は、あまりの人の多さに取材を中断しようとしていたが、塔のような形のパビリオンを見ると 漫画家のアンテナにピンとくるものがあったのか「ありゃ面白い城だ!」と意欲を取り戻し、入り口に足を運んだ。 意欲が戻ったと同時にハイテンションになったのか、入り口のコンパニオンに 「いやー、パビリオンも結構ですが、あなたのような美人も、ゆっくり拝見したいものですなぁ。」と 鼻の下伸びのび軽口をたたく埋れ木父。 その後もその美人コンパニオンに案内を受け、まさにこの世の春状態。 しかし、その決定的瞬間はテレビがガッチリ捉えており、そのやに下がった姿は夕飯を囲む埋れ木家のテレビに 映し出されていた。 「はは、やけにご機嫌だな父さん。」「いいなぁ、自分だけ楽しんで。」と純真な子供達をよそに 「全くあの人ったら!偉そうに取材だとか何だとかいっておきながら!何よ、あんなに鼻の下伸ばしちゃって・・!」 そう言いながら怒りに任せて猛烈な勢いでご飯をかきこむ埋れ木母。 夫婦の絆が大ピンチ! 悪魔くんが「母さん、落ち着いて。」と宥めている傍で、「なら、あたしがお父さんを連れて帰ってきてあげる!」とエツ子が 父回収役を名乗り出た。 博覧会に行きたいエツ子の一石二鳥を狙った作戦に、「エツ子一人だと心配だから、百目がついていってやったら?」と、 心配でも自分がついて行くつもりはない悪魔くんは二人で行く事を提案した。 密かに博覧会に行きたかった百目は埋れ木家の夫婦戦争勃発の危機には目もくれず、 振ってわいた幸運にエツ子と共に大喜びしていた。 翌日、博覧会場へやってきた二人は想像以上の賑わいに驚きを隠せず、辺りを物珍しげに見まわしていた。 しかし会場内には蛙のような顔をした人間が何人もおり、普通ではない雰囲気が・・・。 百目は「何だか変だもん!」と疑念を抱くが、エツ子は「そういえば変な顔しているわね。」と緑色の顔色を見ても動ぜず、 一言ですましていた。 釈然としないものを感じながら博覧会を進み、人だかりのパビリオンの前を通りかかると、友人らしき二人の少年と一緒にいる見なれたカメラ小僧の姿が目に映った。 「あっ、情報屋さんも来てるわ!」 「さすが、情報屋だもん!」 情報屋の名に恥じぬアンテナの高さに感心する百目だが、友人に得意満面で喋る情報屋の話は とんでもないものだった。 「いいかい、これは誰にも言っちゃあいけないよ。ここだけの話だけどさ、俺達の友達に魔法の達人がいるんだぜ!」 前回メフィスト二世にあれだけ口止めされていたにも関わらず、バラす気満々の情報屋。 「その名もあくまく・・」 得意の絶頂で暴露しようとしたその瞬間、 「もーん!」 百目の魔力が炸裂し、情報屋はくしゃみを連発!直後百目の姿を発見して蒼白に。 「約束だもん!」 何も知らない友人達は「魔法の達人」の名を教えてくれと迫るが、目の前に刑執行人がいるのに言えるはずも無く、 早く中に入ろう!と慌てて我が身の危機を回避した。 パビリオンの中は薄暗く、いかにも何か出そうな雰囲気で満ちていた。 おっかなビックリ進む百目達。と、突然前方から何かが飛んできた! 腰を抜かさんばかりに驚く一同だが、その正体はシルクハットにタキシード、そしてマントと どこかの誰かを彷彿とする格好をしたごく普通の男だった。 「何だ、余興だったのか。」と安心する情報屋達。 男はエツ子に「さあ、美しいお嬢さん。」と見え透いたおせじを言い、「やだ、美しいだなんて。」と嬉しがるエツ子の手を 取った。 そしてマントでエツ子を隠し、マント広げると・・誰もいない! 声はすれどもエツ子の姿は見えない、皆が驚いていると男はマントの中からエツ子を取り出した。 「大丈夫ですよ。美しいお嬢さん。」 この不思議だが意味の無いパフォーマンスにすっかり興奮した情報屋達は、 その後も妖しげな丸薬を飲まされて情報屋が火炎放射人間になったり、 笛使いが壷から出したコブラを見て絶叫したりしながら不思議世界を存分に満喫していた。 出口近くでこれは手品どころじゃない、あのコンパニオンの言うとおり魔法も本当にあるんじゃないのか、と興奮気味に話す 情報屋の友人達。 そこにコンパニオンが現れ、今まで見てきたような素晴らしい力を手に入れたくはないか、 既に多くの人々が自分達の仲間になっている、と聞くからに怪しげな誘いをかけてきた。 ここが町中ならば裸足で逃げ出すような胡散臭い話だが、ついさっきまでの不思議体験がまだ抜けきらず、 友人達は「超能力者になれるかな?」と極楽トンボな事を言いながらエツ子と共にコンパニオンの案内する方へ歩いていった。 ウキウキで情報屋もついて行こうとするが、今までの余興が黒悪魔の使う魔法だと感づいた百目が情報屋を止めた。 しかし情報屋は 「白でも黒でもいいじゃないか!他にも大勢仲間もいるって言うしさ、大丈夫だって!」 ついこの間の恐怖は情報屋にとって全く教訓とならなかったようです。 結局、百目も流されるままに情報屋についていった・・・。 一方、一緒に行かなかった悪魔くんは、自室でタロット占いをしていた。 結果を見てうーん、と唸っている時、普段散々たかっている分の埋め合わせなのか、 メフィスト二世が「おやつに」と死神屋のラーメンを持って部屋に現れた。 このメフィスト二世らしい差し入れに嬉しそうな悪魔くん。 「でもメフィスト二世って気が利くな。魔界のラーメンか、美味そうだな。」 魔界のラーメンは材料に蛙やらイモリやら毛虫やらが入っているかもしれないのですが。 幸い妙な具は入っておらず、ほのぼの平和なラーメンタイムを満喫し終わった後、再びタロットカードを見て考え込む二人。 西方、城、復活・・・。これらが意味する所は一体・・。 メフィスト二世は百目達がいるパビリオンが映っている博覧会のパンフレットの表紙を見て叫んだ。 「悪魔くん!これは・・・!」 メフィスト二世の言葉にかなり短絡的だが悪魔くんは博覧会が怪しいとにらみ、博覧会場へ向かう事にした。 一方百目達はコンパニオンに導かれるままに人気の無い地下室にやって来ていた。 中を進むと、蛙と、先程博覧会場で見かけた蛙のような顔をした人間がこちらにやって来た。 その中には、蛙顔の埋れ木父の姿も・・! 「そうよ。蛙人と言って、私の忠実な部下になったの。あなた達ももうすぐそうなるのよ。」と不気味に落ち着いた口調で 話し出すコンパニオン。 コンピューターで動かしているだ、と信じたい情報屋の希望を打ち砕くように蛙人父がベロを伸ばし、エツ子の顔を べろーーっと舐めた。 そのリアルな気色悪さにエツ子はあえなく失神、 それを合図にするように失神したエツ子をおぶり全員出口へ駆け出すが、 逃がしはしないとコンパニオンが迫る! とっさに情報屋がカメラのフラッシュをたいた! コンパニオンは驚いた拍子に変身の術が解け、元の姿に戻ってしまう。 現れたのは、ガマガエルのような顔に大柄で恰幅の良い体躯、その上に豪華なピンクのドレスとこの世の地獄のような姿の ゴモリーだった! その姿を見た情報屋は「あ、悪魔だーー!」と 叫び脱兎の勢いで走り出したが、 本性を現したゴモリーが吐き出した泡に包み込まれてしまう。 情報屋は百目に悪魔くんに連絡するよう頼み、百目は出口近くで再び泡をかぶるも何とか逃げ出す事が出来た。 しかし、百目を逃がした情報屋達は、全員蛙にされてしまい、 互いの姿を見て「ゲロゲロ、ゲロ〜・・・」と全員失神してしまった。 情報屋達が窮地に陥っているその頃、悪魔くんとメフィスト二世は奥軽井沢へ移動中だった。 道中、日本が邪馬台国と言われていた時代に 日本を侵略しようとする黒悪魔と、それを防ごうとする白悪魔が戦いを起こし、 その結果、黒悪魔が奥軽井沢に封印されたという確実に教科書に載らない裏歴史を説明しながら 博覧会場へやって来た二人。 そこで子供二人に追いかけられているを奇妙な蛙を見かけた。 逃げ惑っていた蛙は、避難するように悪魔くんの足に縋りついた。 助けを求めるものを見捨てるわけも無く「よしな!怖がってるじゃないか!」「逃がしてあげようよ、ねっ。」と蛙を助けたのだが、 悪魔くんが「さ、自分の家にお帰り。」と言ってもなぜか蛙は動こうとせず、二人にゲロゲロと訴えるように鳴いていた。 蛙を見ていたメフィスト二世は誰かに似てるような・・・と頭をひねらせる。 その蛙には目玉がたくさんついていたのだ。まるで百目のように・・。 メフィスト二世の言葉に答えるように蛙が目からフラッシュを放った! 「何だこいつ!百目じゃないか!」 百目蛙はそうだと言うようにゲロゲロと言い、そのまま先程のパビリオンへ飛び跳ねていった。その後をついていき、 地下室へやって来た! 扉を開け中に入った悪魔くんは、いつものように見事な現状理解力を発揮し、 電光石火でゴモリーを千年生きたガマが更に千年生きた千年ガマのゴモリーと認識、 そこからかつて日本を支配しようとした黒悪魔がゴモリーである事を推理し、 更に傍目には全く同じに見える足元の眼鏡をかけた蛙を情報屋とエツ子を即座に見分けると、皆を元の姿に戻すよう言った。 しかし、博覧会にやって来た人間を蛙人にし、その蛙人達を使い日本を支配するという 元手のかからないリーズナブルな作戦で日本支配を狙っているゴモリーがはいそうですかと聞く訳もなく、 蛙人になった人間は24時間で二度と元の姿に戻る事が出来なくなる、と言い放ち、蛙人達を呼び寄せた。 悪魔くんはじわじわと迫ってくる蛙人達に押されながら、メフィスト二世に何とかゴモリーを封じ込めてくれ、と頼んだ。 埋れ木父に魔力を使えないメフィスト二世は早速ゴモリーと対戦し、泡を避けながら、 魔力 ツノ電撃物質変化でゴモリーを鏡の中に封印した! 「へっ、ガマ女め。てめえの醜い面でもじっくり見ながら、脂汗でも流すんだな。」と、敵とはいえれっきとした女性のゴモリーに 血も涙もない事を言うメフィスト二世。 しかしゴモリーもなかなか分厚い面の皮で、 「こんな美しい私、我ながら惚れ惚れするよ。」と本気でそう思っている口調で言い、 更に「お前も可愛い蛙にしてあげるからね!」と言うやいなや泡を発射、鏡を破壊しそのままメフィスト二世を包み、 メフィスト二世を蛙にしてしまった! 悪魔くんはメフィスト二世がやられた事に一瞬動揺するもすぐに気を取り直し、鳥乙女とサシペレレを召喚、 二人で協力してゴモリーの魔力を跳ね返すよう頼んだ。 そして、二世蛙と百目蛙を追いかけていた父を説得しようと飛び出すが、その機を逃さずゴモリーが泡を発射! 悪魔くんはとっさにマントではじき返すが、意外に素早いゴモリーの動きに対応しきれず泡を直撃、 モコモコと泡に包まれてしまう! 「ははは、悪魔くんなんてチョロイもんさ。」 と今まで登場した黒悪魔達が言いたくて堪らないであろう台詞を言うゴモリー。 その言葉に挑戦するように「それはどうかな?」とサシペレレがゴモリーの背後に現れ、魔力 竜巻大回転を始めるが、 ゴモリーはお約束を破って竜巻が完成するのを待たず、容赦なく泡で攻撃し あっさりサシペレレを討ち取った。 「白悪魔どもめ、思い知ったか!」と有頂天のゴモリー。 しかし、 「ピーンク、ハリケーン!!」 サシペレレを生贄に、鳥乙女がゴモリーの泡を押し戻すという肉を切って骨を絶つ作戦だったのだ! その強力な羽ばたきは早くも蛙化したサシペレレ、二世蛙、百目蛙、そして蛙人を豪快に巻き込みながらゴモリーの泡を 跳ね返した! ゴモリーは自らの魔力を浴びて元のガマガエルに戻り、同時に蛙になった皆も元の姿に戻った。 一瞬蛙人にされていた悪魔くんも無事元の姿に戻り、すぐさまエツ子の元へ駆け寄り無事を確認して一安心。 と、その時ガマガエルに戻ったゴモリーがそそくさと立ち去ろうとしていた。 ゴモリーを逃がしてもいいの?と尋ねる鳥乙女に、もうあれはゴモリーじゃない、ただのガマガエルさ、と 今回も敵に優しい悪魔くんはおとがめ無しの無罪放免でゴモリーを逃がすのだった。 「あばよ、別嬪さん!もう二度と黒悪魔なんかになろうなんて、思うんじゃねえぞ!」 メフィスト二世の言葉に送られながら、ゴモリーは何処かへと飛び跳ねていった。 ゴモリーの野望は潰え、世界不思議博覧会は臨時休業となった。 何故気絶していたのかと不思議がるエツ子達に、百目は博覧会の仕掛けにビックリして気絶したのだと説明し、 笑顔の下に般若を忍ばせ情報屋に強制的同意を求め、事件の収拾に勤めていた。 その横では、悪魔くんとメフィスト二世が、今回の事件には誰かが背後で操っているのだろうと話し合っていた。 「ゴモリーを目覚めさせる事ができる力をもつのは、きっと東嶽大帝に関係ある奴に違いないよ!」 再び憶測で物を言っているが今回は的を得ており、ゴモリーを復活させたロソンは東嶽大帝の手下だったのである。 アメリカではリリスがゴモリーの失敗により東嶽大帝が立腹しているというおっかない状況を怯えながら報告していた。 ロソンも冒頭の余裕もどこへやら。 額に冷や汗を垂らし「分かっている!」と荒々しく言葉を遮ると 「とうとう出てきたな、悪魔くん。今に見ていろ・・。急げ、全世界の黒悪魔達よ!」と憎々しげに呟くのだった。 目次に戻る |
地獄界では、閻魔大王が己の力の源である集魔玉の清めの儀式を行っていた。 地獄の平安もこの集魔玉があってこそ、と亡者にとっては賛同できない台詞を呟きながら浄化を完了させ、 傍に控えていたイモムシ仙人に集魔玉を渡した。 しかし、集魔玉を見つめるイモムシ仙人の顔には妖しげな表情が浮かんでいた・・・。 実はイモムシ仙人は東嶽大帝の部下である吸血小人の吸血催眠で操られており、 集魔玉はそのままイモムシ仙人の庵に陣取っている吸血小人の手に渡ってしまっていた。 己の手を汚さずにあっさり手に入れた集魔玉をホクホク顔で手にする吸血小人は 催眠状態でぽけーと立っているイモムシ仙人に「さて、ご苦労だったな。お前は用済みだ。」とさらりと最終通告を発すると 髪の毛を伸ばし、イモムシ仙人の首に巻きつけ生気を吸い取り出した! イモムシ仙人はどんどん痩せ劣り、その名の通り灰色のイモムシになってしまう。 最後にそれを足でキックし始末を完了させた吸血小人は、東嶽大帝の指示通り、命令が来るまでしばらく待機する事にした。 一方場所は変わって人間界の埋れ木家。 限界に挑戦するかのように部屋の許容量一杯に本が積まれ足場も無い中、悪魔くんはせっせと究極の六芒星探しに 精を出していた。 世界の為日中問わずの真剣作業だが、家人にとっては良い迷惑。 もはや本が大量発生した位では驚かないエツ子は、片付かないから早くお風呂に入れ、と積みこまれた本の隙間から 怒鳴った。 悪魔くんは「メフィスト二世、百目。先に入っててよ。」と二人を先に入らせ、自分は再び研究に没頭。 既にまっとうな小学生生活を放棄している悪魔くんとはうらはらに、最初からやる気ゲージが限りなくゼロのメフィスト二世は、 風呂上りのラーメンをリクエストしながら百目と共に風呂場へ向った。 百目はアヒルで遊び、メフィスト二世はシルクハットを自家製シャワーにして、究極の六芒星も、ここが他所宅だと言う事も 忘れてのほほほんと入浴タイム。 そんな悪魔が我が物顔に陣取る浴室に悪魔くんが入ってきた。 六芒星の事で頭がいっぱいになりながらふと外面する窓に目を向けると、窓の外に佇む人影と視線があった。 痴漢?! 「誰だ!」 悪魔くんの言葉に窓を見るメフィスト二世と百目。 「あ、脅かしてすんません。怪しい者でねえっス。」 とこれ以上ない位怪しい事を言いながら壁をすり抜けて顔を出したのは・・。 「鬼?!」 鬼が痴漢?!と思いきや、実は地獄の閻魔の使いとしてやって来たのだった。 じゃあ何でわざわざ悪魔くん達が風呂にいる時を見計らうようにやって来たのかと一抹の疑問が浮かぶが、 その痴漢・・・もとい赤鬼を、鬼が入れる位に片付けた自室へ連れて行き、詳しく話を聞くことに。 赤鬼の話では、イモムシ仙人によって集魔玉が盗まれ、それにより亡者達が一斉に反乱をし始め、今、地獄は大混乱に陥ってしまっているらしい。 閻魔に亡者を静めるよう頼んでも、当の閻魔は力の源である集魔玉を奪われシオシオになっており、全く役に立たない。 自分は閻魔に頼まれて悪魔くんに地獄の危機を伝えるよう頼まれたのだと、 涙ながらに話し終えるとちーむ、とフリル付きハンカチで鼻をかんだ。 人間に負ける鬼というのも考えものだが、悪魔くんは集魔玉を取り返す為早速行動を開始した。 まずヨナルデを召喚し、容疑者イモムシ仙人について聞き込みを始める悪魔くん。 ヨナルデはイモムシ仙人がグーダラ山という冗談のような名前の山に住んでいる事を話すが、しかしイモムシ仙人は 欲を絶った徳の高い仙人なので、誰かが操っているに違いないと言った。こういう時、普段の行いが物を言うものです。 ならば、と手がかりを探す為、悪魔くんはメフィスト二世と百目と共にグーダラ山に向かった。 人気の無い庵に着いた悪魔くんは、とりあえず手分けをしてあたりを捜索する事に。 探索に出かける二人を見送りつつ、しかし、一体誰が裏で操っているのか・・・と考え込む悪魔くん。 その瞬間、背筋に悪寒が走る! 反射的に後ろを振り返った刹那、細い槍のような無数の髪の毛が襲い掛かってきた! 慌てて逃げながらマントで髪を防ぎ、敵をを見ると、それは一度見たら忘れられない顔の吸血小人。 悪魔くんは吸血小人がイモムシ仙人を操っていた事を悟り、 吸血小人の方も事実を隠すつもりはなく、「イモムシ仙人は丁重に始末させてもらった。」と嫌味な丁寧口調で言った。 丁度その時、騒ぎを聞きつけたメフィスト二世と百目が戻ってきた。 悪魔くんは二人に今回の真犯人は吸血小人だといい、 それを受け、百目は人の物を取ったら駄目なんだもん!と百目フラッシュをお見舞い! しかし吸血小人がとっさにかざした集魔玉が、百目の体から魔力を吸い出してしまった! 魔力を奪われぽやーんとなった百目が目を飛ばそうとしても、目はポロポロと地面を転がるばかり。 「魔力が使えないもん・・・。」 「へっへっへ。集魔玉には魔力を奪う力があるようだな。 これさえあれば、お前らなんか屁でもない。どこからでもかかってこい!」 集魔玉の力を今まで知らなかった事をさりげなく暴露しながら子憎たらしい笑みを浮かべ、余裕の態度をとり出す吸血小人。 悪魔くんは幽子を召喚し、集魔玉の力を逆に吸い取ろうとした。 しかし逆に幽子の魔力も奪われ、更に幽子を助けようとしたメフィスト二世も集魔玉が向けられ、 口からごばっと魔力の塊を出し、そのまま地面に落下してしまう。 十二使徒を片付けた吸血小人は、 「さ、次はお前の番だ。たっぷりと、血を吸ってやろう。」と宣告し、悪魔くんに向かって髪を走らせた! 悪魔くんはマントで防ごうとするが、学習能力バツグンの吸血小人は髪を地面に潜らせるフェントをかけ 悪魔くんの顔に髪を巻きつけた! 「へっへっへ、苦しめ、苦しめ。」 髪から悪魔くんの生命エネルギーをゴンゴン吸い取っていく吸血小人。 メフィスト二世達は助けようと駆け寄ろうとするが、魔力を無くし、思うように体が動かない。 悪魔くん、最大のピンチ! その時、百目の後ろの茂みからふよふよと煙が立ち昇ったかと思うと、 その煙が吸血小人を吹き飛ばした! 煙の正体は先程名の通りイモムシ化したイモムシ仙人。 修行の末不老不死となっていたイモムシ仙人は、霊魂の姿で吸血小人に戦いを挑んできたのだ。 しかし吸血小人を吹っ飛ばす霊魂とは思えないパワフルさを見せたイモムシ霊魂だが、集魔玉の力には敵わなかった。 突然の攻撃から立ち直った吸血小人が掲げた集魔玉にドンドン吸収されるイモムシ霊魂。 完全に吸収される前に悪魔くんがタロットカードで吸血小人を攻撃し、 50%縦縮小されながらもなんとか救出する事に成功するが、このままでは全員やられるのは時間の問題。 一体どうすれば・・・。 その時、細イモムシ霊魂は、地獄の秘宝に刀鏡というものがある。それは閻魔が腰に鏡の形で着けており、 それを使えば集魔玉に対抗できる、と悪魔くんに話した。 しかしそれを吸血小人の前で堂々と話してしまった為、吸血小人は喜び勇んで地獄に行ってしまった。 悪魔くん達は疲労困憊の体を何とか起こし、家獣に乗って地獄へ向かう為、 イモムシ仙人の言葉に従いグーダラ山の山頂へ向かった。 イモムシ仙人が言うには、ここから地獄へ通じているらしい。 しかし火口にはマグマが浮かび、別の意味で地獄へ行ってしまう予感がヒシヒシと家獣を包むが、 悪魔くんの「勇気を出して飛び込むんだ」と言うのは簡単な頼みを断る訳にもいかず、 祈りのポーズをとり、火口に飛び込んだ! 強力な重力が全員にかかったものの、マグマに焼かれる事もなく、無事地獄へやって来た悪魔くん達。 そのまま閻魔の宮殿前まで飛んでいくと、宮殿前は反旗を翻した亡者達で溢れかえっていた。 一番ダメージを受けよろよろしている悪魔くんを皆で支えて外に出ると、 悪魔くんの姿を発見し、亡者達が津波のように襲い掛かってきた! 幽子は亡者の波に飲まれながらも豆ユーレイに悪魔くん、メフィスト二世、百目を運ばせ、家獣、イモムシ仙人と共に 後に残った。 悪魔くん達を運べる程屈強な筋力を持っていた豆ユーレイ達によって閻魔の宮殿にやって来た悪魔くん達が見たものは、 痩せ衰えて倒れている鬼達の姿だった。 「出遅れたな・・・急ごう!」 悪魔くんはそう言い、メフィスト二世にオンブされながら閻魔のいる間に向かった。 その頃バッタバッタと鬼を倒しながら吸血小人が閻魔の間にやってきていた。 そこには白目を剥いている閻魔と、悪魔くんの家にやってきた赤鬼ともう一人の鬼がいた。 ここは通さん!と凄む鬼を子馬鹿にしたように笑うと、いつものように集魔玉をかざす吸血小人。 「地獄の鬼と言えども集魔玉の力には逆らえまい!」 魔力を奪われまいと必死に抵抗する鬼だが、その顔は苦渋に満ち、限界が近いのが分かる。 その時、悪魔くん達が到着した! 「悪魔くん、来てくれたんスか!」 赤鬼が苦しいながらも安心したように言ったが、ふらふらの悪魔くんと魔力を使えないメフィスト二世達で どうやって吸血小人の侵略を防ぐ事ができるのか・・。 悪魔くんは、閻魔に剣を振るうよう言うが、ぐんにゃりと傾ぐ閻魔の耳には届かない。 悪魔くんはソロモンの笛で閻魔大王の魂である仁王に力を送ろうと、ソロモンの笛に口をつけた。 が、そのまま倒れてしまう! 「悪魔く〜〜ん!」 「しっかりしろ、悪魔くん!」 慌てて悪魔くんにかけよる二人。 悪魔くんが倒れた姿を見た吸血小人は 「へっ、ざまあみろ。さあ、お前もさっさとお寝んねしちまいな!」と 憎たらしさ100%の台詞を吐き、赤鬼を始末にかかる。 しかしその時、ソロモンの笛が独りでに浮かび上がり、笛の音を奏で始めた。 どうなってるんだもん?ときょとんとする百目の横で、メフィスト二世は悪魔くんが魂でソロモンの笛を吹いていると気付いた。 『仁王様、立ち上がって、剣を振って下さい・・・!』 得意の絶頂の吸血小人は悪魔くんの必死の行動を無駄だ!と笑いながら閻魔の足元に到達し、 腰に下がっている鏡を取ろうと手を伸ばした。 しかし手にする直前、鏡は白目のままの閻魔の手に移った。 「ま、ま・さ・か・・・!」 吸血小人の顔に初めて焦りが浮かぶ。 鏡は閻魔の手の中で巨大な剣に変化し、吸血小人に向かって振り下ろされる! 「くそ!」 吸血小人は慌てて集魔玉を向けるが、集魔玉は剣に吸い寄せられ吸血小人の手から離れてしまう。 そして吸血小人は恐怖に引きつりながら剣の露と消えたのだった。 集魔玉が閻魔の手に戻ったことで干物になった鬼やイモムシ仙人、そしてメフィスト二世達の魔力も元に戻り 地獄の混乱は無事収まった。 仁王は悪魔くんが以前より力をつけた事を告げながら、東嶽大帝が以後ますます攻撃の度合いを強める事を警告した。 そして場所は変わり、アメリカのロソンビル。 吸血小人の失敗で東嶽大帝が事の他怒っていると報告したリリスは 「こちらから乗り込むべきでは!」と進言する。 その言葉にロソンは厳しい顔をするのだった・・・。 目次に戻る |
アメリカのロソンビルではリリスがゴモリー、吸血小人の失敗で東嶽大帝が相当ご機嫌斜めだと報告していた。 最初こそ人間界支配は着々と進んでいるのだと余裕の態度だったが、 リリスの悪魔くん達が自らの力を高める方法を探しているらしいという追い討ち報告に次第に焦りの色がではじめ、 遂に自らが動き出す事を決意した。 所変わって日本の埋れ木家。 二階では長男と居候が書物に埋もれソロモンの鍵探しに没頭し、 家族は何事もないように鍋を囲みテレビを見る、そんな普段と全く変わらない風景の中、 テレビではロソンコンツェルン会長ロソンが日本に休暇にやって来たというニュースが流れていた。 アメリカンドリームそのものの姿を眺めながら 「特別機でふらりと休暇とはねぇ、金持ちは豪勢なもんだなぁ〜。」と呟く一般市民そのものの埋れ木父。 しかしロソンが「休暇」に向かったのは日本の何処にこんな場所があるのかというような人気の無い遺跡。 マント着用でやる気満々のロソンは短剣を使って魔法陣を描き、呪文を唱えだした。 すると魔法陣を囲むように石版が現れ、同時に世界各地から大量の霊魂エネルギーが集まり始めた。 「今からきっかり13時間後に、この私は途方も無い力を手に入れる。 だが、その時まで悪魔くんに邪魔をされぬよう、手を打たねばな。」と、リリスに妨害を命じた。 怪しげな陰謀渦巻く一夜が明け、悪魔くんは小学生の務めを果たすべく百目、情報屋、貧太と共に学校に向かっていた。 「百目。学校が終わったら道草せず家に帰って昨日の続きをするんだぞ。」と馬車馬モードで頑張る悪魔くん達。 その姿を見た情報屋と貧太が自分達に出来る事なら何でも協力するから遠慮なく言ってくれ、と 麗しい友情を感じさせる言葉をかけたその時、突如背後からカードが迫ってきた! 360度パノラマ視界の百目が事前に察知し全員かろうじて避ける事が出来たが、 今度はそのカードが怪物に変化し襲い掛かってきた! しかも背後を見ると黒の帽子にスーツ、そして無表情の男が二人立っている。 そのおよそ健全な市民とは思えない雰囲気から即座に敵と認定し、皆まとめて戦闘開始! 抱き合って子鼠のように怯える貧太と情報屋をよそに、悪魔くんはタロットカードで怪物一匹をしとめ、 百目も青白い男の一人を倒した。 非力な二人にしては珍しく圧勝ムードだったがそれもつかの間、怪物の一撃を食らい悪魔くんが吹き飛ばされてしまった! 一気に旗色が悪くなったその時、 「魔力 稲妻電撃!」 絶妙のタイミングでメフィスト二世が現れた! 瞬く間に男と、情報屋、貧太、百目を今まさに襲わんとする怪物をまとめて始末したメフィスト二世は 座り込んで腕を押さえている悪魔くんに駆け寄った。 そして傍目にはたいした怪我には見えない悪魔くんの怪我を見て 「この様子じゃあ学校は無理だな。」と言い、残り三人も 「学校の方なら僕達がなんとかするよ。」 「僕に良い考えがあるもん!」 「俺も手伝うぞ!悪魔くんは心配しないでゆっくり休んでくれよなっ。」と口々に悪魔くんに休むよう言った。 悪魔くんは皆の好意に甘え、病院には行かずいつもの洞窟で療養する事にした。 そして学校では百目が豪語した『良い考え』が決行されていた。 教室では先生が朝の点呼をはじまっており、 順番に生徒の名が呼ばれている。悪魔くんの名が呼ばれた時、「はいっ」という返事が。 しかし席に座っているのは情報屋。 「あら、あなた。隣のクラスの・・。」 さすがに自分のクラスの生徒は把握している先生が情報屋に気付いた瞬間、百目の魔力で情報屋の姿は悪魔くんに メタモルフォース。 この友情の連携プレーと情報屋の無断欠席により、悪魔くんの出席日数は確保されたのだった。 その頃洞窟ではメフィスト二世が 怪我をした腕ではなく頭にタオルを乗せ、タイミングよく現れた経緯を話していた。 メフィスト老は息子を置いて一人里帰りをして空のドライブを楽しんでいた。 しかしその時強力な霊魂エネルギーが何処かに集まっているのを目撃し、 それが気になりメフィスト二世に悪魔くんに注意するよう伝達させたのだった。 「それにしても変な連中だったな・・・。」 と昼間の襲撃者を思い起こすメフィスト二世。 悪魔くんは流石に正体を見抜いており、あれは人工生命エレメンタルという魔法で作られたロボットで、 怪物の方は文字や絵を使うゲマトリア魔術だと説明した。 ロボットなら誰か動かしている人物がいたはず・・・。 しかし今は休養する事が先決。 自分がついているからゆっくり休め、とメフィスト二世は悪魔くんに休息するよう言うのだった。 ピクシー呼んだ方が早いと思います。 朝の襲撃はリリスが悪魔くんに負傷させ足止めさせようと悪魔くんの通学路と通学時間を調べ上げて仕掛けたもので、 事の一部始終を物陰から見ていたリリスはロソンの元に戻り、今日一日は悪魔くんは動けない、と報告した。 足止め出来る位なら息の根を止めた方が手っ取り早いのだが、 ロソンは それだけあれば十分だ、と満足そうに頷いた。 時は過ぎて下校時間となり、貧太達も洞窟にやって来た。 だがそこにもう一人来客が。 「てーへんだ、てーへんだ!悪魔くんっ、てーへんでヤンスよ〜っ!」 パニックのあまり岡引の子分口調になったこうもり猫が飛び込んできた。 何をそんなに慌てているのかというと、魔眼の調査で巨大な彗星が日本に接近しており、 このままでは衝突は避けられないという事が分かったのだ。 そんな凄まじいニュースを聞けば日本在住者ならパニック必至だが正常な反応を示してビビリ倒していたのは情報屋のみで、 貧太はさして衝撃を受けたような顔は見せず、 そんな大きな彗星なら天文台が発見しているのに、と冷静な疑問を口にした。 ヨナルデの考えでは何か強力な力が働いているらしいとこうもり猫が言ったのを聞き、 悪魔くんとメフィスト二世は通常ではありえない事なら当然黒悪魔が介入しているはず!といつもの論理で この彗星落下は黒悪魔が日本の何処かで彗星を引き寄せていると断定した。 だが、一体それは何処なのか・・・。 皆が考え込む中、悪魔くんがポツリと呟いた。 「黒悪魔が強い魔力を発揮できる場所が日本にあるとしたら・・・たった一つ・・・。」 「あ、分かったぞ!大昔黒悪魔のアジトだった軽井沢しかねえ!」メフィスト二世が叫んだ。 場所が判明した今、一刻も無駄にできない。悪魔くんは傷が痛むのを堪え、 情報屋と貧太に見送られながら軽井沢へ向かった。 軽井沢奥地にやってきた悪魔くん達が見たものは、 石版に囲まれた魔法陣の中で呪文を唱えているロソンの姿だった。 同時にリリスとロソンも悪魔くんの姿に気付く。 「そ・・・そんなはずは・・!・・・申し訳ありません、ロソン会長。」 どう見ても動けない怪我のようには見えなかったが、悪魔くんが動けないと100%信じて疑わなかったリリスは 口惜しそうに謝罪した。 「ロソン・・・?」 「そんな黒悪魔聞いた事ないぜ。」 近頃情報メディアから遠ざり気味の悪魔くん達はロソンの名を聞いてもピンと来ない。 「ふふふ・・・これならどうだ?」 ロソンはそう言うと自分の顔を鋭い爪で引き裂いた! スプラッタ!・・・かと思いきや、皮膚の下から角が生え、翼が生え、尻尾が生え赤い体の悪魔の姿になった! 「お前はバラモン!」 バラモンは数百の妖術を操る魔法の天才。彗星を日本に落下させる事も可能なはず! だがバラモンはその彗星は強大な力を持つ霊魂爆弾だと言い、 後数分で自分がそれを手にするのだ、と宣言した。 ロソンを止めようにも、魔法陣を囲む石版の結界はメフィスト二世の稲妻電撃すら跳ね返す強力なもの。 更に、 「どうやらこの、ワンレンボデコンも女悪魔みたいでヤンスよぉ〜。」 懐かしい呼称で称されたリリスが悪魔くん達に立ちふさがる! 「お前達に邪魔はさせないよ!バラモン様、ここは任せて早く!」 と律儀に名前を呼び変えゲマトリア魔術を使い怪物を作り出した! だが窮地に陥っても悪魔くんの知性は鈍る事はなく、バラモンを魔法陣の外に出せばまだ間に合うかもしれない、と 百目とメフィスト二世に援護を頼み、突撃を試みた。 「よし、任せとけ!」 「頑張るもーん!」 百目はフラッシュ、メフィスト二世は魔力 金縛りロープで怪物を捕縛! そして「悪魔くん頑張れ!アッシ祈ってますッ!」と脇で震えてうずくまるこうもり猫の声援を背に 悪魔くんは怪物の間をすり抜け魔法陣を描き出した。 しかし、こうもり猫の祈りが効いたのか、ヒーロー世界の暗黙の了解を破りリリスが攻撃! 無防備だった悪魔くんは吹き飛ばされてしまった! メフィスト二世達は怪物を捕縛していて助けにいけない。 ダメージで動けない悪魔くんに怪物の手が伸びる! が、腕が悪魔くんの頭を直撃する直前、巨大な車輪が怪物を押しつぶした! そして姿を消していたリリスにも男女平等に引き逃げアタック! リリスは悲鳴を上げ吹き飛び、同時に怪物も掻き消えた。 ボロボロになった悪魔くんが何とか顔を上に向けると、そこには見えない学校が・・・。 そしてもちろん、 「「悪魔くーん!」」 十二使徒達の姿も! 「ありがとう見えない学校・・・行こう!」 こうもり猫を放置し三人は見えない学校に入った。 そして悪魔くんは司令室に入りソロモンの笛を吹きはじめ、 慌てて合流したこうもり猫を含めた十二使徒達も力を出し合い悪魔くんをサポート。 魔法陣内のバラモンはもはや手遅れだと霊魂爆弾を引き寄せる力を強めるが、 そのバラモンを守る石版に見えない学校の魔輪が降り注ぎ、とどめに見えない学校本体とドッキング! 魔力は反射できても圧倒的質量の差は如何ともしがたく石版は脆くも崩れ去り、 バラモンも爆風のあおりを食らって葉のように吹き飛ばされてしまった。 しかしバラモンを魔方陣の外に出しても霊魂爆弾の落下は止まらない。 が、見えない学校の生命玉が大きく輝き、霊魂爆弾を包み込むように赤い閃光を放った! 『君達は、バラモンの魔力で黒悪魔にされてたんだよ・・・。 さあ、目を覚ますんだ!そして元の綺麗な魂に戻って、自分たちの体へお帰り・・・。』 ソロモンの笛を通して悪魔くんの言葉が霊魂爆弾に浸透すると、 ひとつ、又ひとつ霊魂が浄化され、世界に散っていった。 同時に暗雲は晴れ、陽が再び照らし始め、日本の危機は悪魔くん達によって回避されたのだった。 事件が無事終着したが、バラモンへの詰問タイムが残っていた。 正体を表した時の大見得切はどこへやら、土下座して命乞いするバラモン。 「頼む・・・!命だけは助けてくれ!百億、いや二百億・・・ いや、俺の稼いだ金は全部やる! だから命だけは・・!」 しかし物欲がない悪魔くんはそれより東嶽大帝の居場所を教えてくれ、と尋ねた。 流石に一瞬言いよどむが、己の命と失敗すれば即ポイの東嶽大帝を天秤に乗せ一秒で我が身側に傾いたバラモンは 手もみしつつ答えようとした。 「分かったよ・・・東嶽大帝は・・・」 だがその時一枚のカードがバラモンの頭上に浮かぶと凄まじい勢いでバラモンを吸い込みだした! 「リリス!貴様・・!」 ブラックホールの如くの吸引力で体の半分を吸い込まれたバラモンは叫んだ。 カードが飛んできた方を見ると、魔輪に吹っ飛ばされてもしっかり生きていたリリスが蔑むような笑みを浮かべていた。 「気安く呼ぶんじゃないよ! 私は東嶽大帝の123番目の娘。お前の監視役だったのさ! とんだヘマをやらかした上に裏切ろうだなんて、東嶽大帝を甘く見るんじゃないよ!」 単なるサブキャラだと思っていたリリスにガラの悪い口調で嘲られショックを隠せないバラモンはそのまま カードに吸収されてしまう。 バラモン吸引カードを回収したリリスは 「悪魔くん、お前達もだ。東嶽大帝に逆らおうたって無駄な事さ。勝負はとっくに見えてるんだからね。」と宣言。 「どうせ負け惜しみに決まってるわ!」と臨戦態勢の鳥乙女の言葉にも 「今に分かるさ。」と含みをもたせた余裕の言葉で対応し、そのまま高笑いと共に素早く撤退してしまう。 メフィスト二世はその悪役に相応しい素早さに「くそーっ、素早い奴め。」と苦々しく呟いた。 その時、魔道カーに乗ったメフィスト老が大慌てでやって来た。 メフィスト二世は 「バラモンの事件なら無事に解決したぜ。しかし、今回ばかりは親父のおかげで助かったよ。 伊達に年はとってねーなー。ハハハハ」と感謝しているのか喧嘩を売っているのか分からない言葉で迎えるが、 メフィスト老は珍しくふん、と一蹴し 今、魔界や他の世界では、東嶽大帝の力に屈服しようとしているという青天の霹靂の一大事を伝えた。 衝撃の事実を聞いた悪魔くんはすぐに見えない学校へ行き、校長室の扉を叩きながらファウスト博士を呼んだ。 しかし、ファウスト博士は何も答えない。 悪魔くんの背後からそっとやってきた鳥乙女は、ファウスト博士はこの所部屋に閉じこもったきりで 返事もしてくれないのだ、と言った。 ファウスト博士が何をしているのか、なぜ答えてくれないのか・・・。 絶望的な状況の中、悪魔くんは扉の前に立ち尽くす事しか出来なかった・・・。 目次に戻る |
校長室に閉じこもっていたファウスト博士は、究極の六芒星の場所のヒントはもはやこの本しかない、と 父である初代ファウスト博士の日記を必死に読みふけっていた。 と、埃っぽい室内の為つい咳き込んだ拍子に本が手から飛び出してしまい、 とっさに表紙の端を掴むとカバーが破れてしまった。 が、その破れたカバーの下に古い地図が顔を覗かせていた! 「おお・・!これこそまさにソロモン王の鍵を記した古代魔法地図に違いない!」 ファウスト博士は時を移さず悪魔くんと十二使徒を呼び寄せ、 自分がうっかり破いた日記の表紙の中にありましたとは一言も言わず古代魔法地図を広げ ソロモン王の鍵の場所を説明しだした。 その地図には「輝ける十二の星を従えし者 勇気を持って飛び降りよ」 つまり十二の星=十二使徒を従えた悪魔くんが、「勇気を持って」海中に飛び込めと書かれていた。 ファウスト博士はおもむろに説明を始めた。 かつて世界は超大陸パンゲアと呼ばれる一つの大陸であったが、時と共に6つの大陸に分かれ、現在の地形となった。 その大陸を線で繋げると、かなりひしゃげているが六芒星を描いており、 その中央に位置している場所に現在は海に沈む第七の大陸があり、そこに究極の六芒星があるというのだ。 話が大仰な方向に向かってきているが、遂に究極の六芒星の場所が判明した! 悪魔くんは即見えない学校を発進させ、異次元空間を通りシバの神殿の真下に位置する海面に到着した。 ファウスト博士はシバの神殿を守る大魔神が目覚める前に究極の六芒星を見つけなくてはいけない、と 最優先に言うべき事をついでのようにさらりと言って悪魔くん達に忠告した。 そして「家獣に乗ってシバの神殿に向かうぞ!」と家獣の安否一切無視の悪魔くんの号令と共に 皆を乗せた家獣は一気に海に飛び込んだ! この付近の海は人間に荒らされておらず、海中は色鮮やかな魚が泳ぎまるで水族館のような美しさだった。 どんな時でも余裕を失わない悪魔くんと十二使徒は、目の前に広がる景色を堪能していた。 皆が観光気分に浸っている間も一人孤独に頑張る家獣はどんどん下へ潜っていたが、 光の届かない深海に達すると家獣の体は水圧でどんどん押しつぶされていく。 「頑張ってくれ家獣!君の勇気が、シバの神殿への扉を開くんだ!」 勇気というより根性で水圧に耐え7割縦縮小されながらも海底目指して潜っていくと 下が明るくなってきた。 「あれがシバの神殿だ!」 プレス拷問中の家獣の中、喜びに沸き返る一同。 しかし、安心するのはまだ早かった。 いきなり凄まじい衝撃が悪魔くんたちを襲う! ソンコイの竜というシバの神殿の門番役を勤める悪魔が侵入者を排除しようと猛撃を仕掛けてきたのだ。 ただでさえ水圧で弱っている上にソンコイの竜の執拗な攻撃でダウン寸前になりながらも家獣は潜り続け、 あと少しという所までやって来た。 しかしそうはさせまいとソンコイの竜が襲い掛かってきた! だがアタックを受ける直前、家獣が太陽も無いのに窓ガラスを使ってフラッシュ! 深海育ちのソンコイの竜はたまらず撤退、 その隙に家獣は5割縮小に縮小率アップされながらもシバの神殿に辿り着く事ができた。 外に飛び出したメフィスト二世は「あれ?空気があるぞ。」と 何の疑問も抱かずに外に飛び出した者の言う台詞ではないような事をいったが、 この神殿内は魔力によって海水を押し上げている為空気が存在しているのだった。 その強大な魔力に感心している最中、遂に家獣がダウンしてしまう。 涙を浮かべて感謝する悪魔くん。 「ありがとう家獣、君の勇気を見せてもらったよ・・・。」 何度考えても根性としか思えませんが。 だが感動している間はなかった。シバの神殿内には既に侵入者が入り込んだ情報が行き渡っており、 どこからともなく鳥と魚の合いの子に足を生やしたような姿の悪魔が十重二十重に悪魔くんを取り囲んでいたのだ! 「ここはあたしとサシペレレに任せて、皆はシバの神殿へ!」 鳥乙女とサシペレレが悪魔達を吹き飛ばし、神殿への道を開いた。 悪魔くん達は二人と燃え尽きた家獣を置いて神殿へ走り、門をくぐろうとした。 すると上から門が! だが象人が怪力魔力でつっかえ棒となり、鼻で早く行けと催促する象人を残し神殿内へ突入した! しかし通路を渡っていると通路が切断されており、ご丁寧に下には剣の山。 空から行こうにも大量の骸骨の鳥を引き連れた翼の生えた黒豹が現れ、それも叶わない。 「ユルグ、こうもり猫!ワシと繋がって橋になるんじゃ!」 妖虎の一声でこうもり猫、ユルグ、妖虎は獣系の体長の長さを生かして掛け橋に! かなりやっつけ仕事な橋だが、ヨナルデの体重も支えきり、全員向こう岸へ渡る事に成功した。 そして黒豹と応戦するメフィスト二世と、「ここまでおいで〜」と同士討ちを誘ったり鳥に乗ってポカポカ叩いている 戦っているのか遊んでいるのか微妙な豆ユーレイ、ピクシーを残し 悪魔くんは遂に神殿の玉座の間に辿り着いた。 玉座の間の正面にはシバの女王の像が鎮座し、手前には侍女の像が二対、女王を挟むように立っていた。 「何だかほんわかした気持ちになってくるもん。」 後ろでは血で血を洗うバトルが繰り広げられているがシバの女王の像から発せられる雰囲気に和む百目。 しかし横を向いていた侍女の像がこちらを向いたかと思った途端目から光線を発射し、 百目、ヨナルデを石化させた! 油断させておいての容赦ない攻撃、悪魔くんは幽子に照魔鏡で光線を跳ね返すよう指示し、 一気にシバの女王像の前に走った! 悪魔くんがシバの女王の前に着いた時、残りの十二使徒達も玉座の間に現れた。 しかし間髪いれずに侍女像の光線を浴びて全員石化してしまう! 驚く悪魔くん。その直後、悪魔くんとシバの女王の間に六芒星を描く十二の穴の入ったタブレットが現れ、 同時に十二使徒の石化も解かれた。 そして悪魔くんのソロモンの笛を結ぶ十二の玉がはじけ飛び、 石化した際に魔力が完全に吸い取られてしまった十二使徒の手の中に落ちた。 「分かったである!ソロモン王の鍵とは悪魔くんのソロモンの笛の十二の玉の事だったんだわさ!」 「あの穴が鍵穴という事じゃな!」 妖虎は目の前のタブレットを指差した。 「よし、第一使徒の俺からだ・・!」 ふらつく足でメフィスト二世がタブレットの前に立った。 途端にタブレットから怪物が飛び出した! いきなりの化物のアップに後ろに倒れる二世。 しかしそれはタブレットがメフィスト二世を試す為に出した幻だった。 メフィスト二世は勇気を奮い起こしてタブレットに玉を埋め込んだ! 「さあ・・・次だ!」 そしてユルグ、ヨナルデと全員ハンで押したように怪物に驚く中次々にタブレットに玉を埋め込み、 最後のこうもり猫が玉をはめこんだ瞬間、タブレットが光を放ち、悪魔くんを吸い込んでしまった! 悪魔くんは気を失ったまま真っ暗な空間の中に漂っていた。 が、悪魔くんの耳にどこからか声が聞こえてくる。 『よく来たな悪魔くん・・・』 声と同時に雲がたちこめやがて人の姿となった。 「あなたは、ソロモン王!」 ソロモン王は髪とヒゲをゆらゆらとたなびかせながら 3000年前から一万年に一人現れるという悪魔くんをこのタブレットの中で待ち続けていた事を語った。 「お願いです、ソロモン王。僕達に究極の六芒星を教えてください! 東嶽大帝と戦う為には、究極の六芒星を完成させるしかないんです!」 「確かに、十二使徒の勇気は見た。 じゃが、悪魔くん。君の勇気はまだ見せてもらってはいない!」 そしてソロモン王の提示した勇気の証明は、 一度入れば光さえも戻って来られない時空の穴の中にソロモンの笛を投げることだった。 予想もしなかった要求に困惑する悪魔くん。 「この笛のおかげで、今まで沢山の困難にも立ち向かってこれたんだ。 それを捨てるなんて・・・。」 「まだ迷っているのか!君は夢を忘れたのか! 世界の全ての者達が、互いに手を取り合って仲良く暮らせる世界を作るという夢を!」 その言葉にハッとなる悪魔くん。 「それを実現させる為には、ソロモンの笛を捨てても戦おうという真の勇気が必要なのじゃ!」 「勇気・・・。ソロモンの笛を捨てる事が、僕の真の勇気・・・。 この笛がなかったら、僕はこれから戦う事が出来るんだろうか・・。」 だが悪魔くんは十二使徒は魔力を失っても勇気を失わなかった事を思い出す。 「それこそ、真の勇気・・・。」 「さあ、真の勇気を見せてもらおう!」 穴を見つめる悪魔くんの目に迷いはなかった。 そして・・・ 「僕の夢に届け!」 大きく腕を振りソロモンの笛を時空の穴へ投げ込んだ! ソロモンの笛は一直線に暗闇の雲の中へ吸い込まれていった。 その瞬間、ソロモンの笛が消えた先から光が溢れ、悪魔くんは玉座の間に戻ってきた。 駆け寄る十二使徒。丁度時間切れで大魔神が動き出し襲い掛からんとしている所だったのだ。 全員魔力切れで対抗する術はない。 だが悪魔くんは「この神殿を守る君には僕達の心が通じるはずだ!」と強気の呼びかけをする。 しかし大魔神の歩みは止まらず、悪魔くん達を踏み潰さんと大きく足を持ち上げた! その時・・・。 「ソロモンの笛だ・・・ソロモンの笛が独りでに鳴ってる・・・。」 暗黒の彼方に消え去ったはずのソロモンの笛の音が、どこからともなく聞こえてきた。 と、タブレットが崩れ去り、埋め込まれた十二の玉が十二使徒の下へ飛び魔力を回復させ 悪魔くんを中心とした六芒星の位置に移動させた。 そしてそのまま悪魔くんの胸元に集まって一つに繋がった。 そこにはソロモンの笛がしっかりと繋がっていた! ソロモンの笛が悪魔くんを正当な持ち主として認めたのだ。 悪魔くんの声が響き渡る! 「大いなる夢の実現の為に十二の星となり、輝け、究極の六芒星!」 悪魔くんの声と共にソロモンの笛が輝き、十二使徒を点とした黄金に輝く六芒星が浮かび上がる! 六芒星は大魔神を持ち上げ、輝く光となって元の石像に戻った大魔神を鎮座させた。 水晶球でその様子を見守っていたファウスト博士は感慨に浸る。 「父上、父上の果たせなかった夢を、我が生徒達が見事果たしましたぞ・・・!」 究極の六芒星を手に入れた悪魔くん達。 遂に東嶽大帝と直接対決する時がやって来たのだった。 目次に戻る |