魔界では東嶽大帝が黒悪魔を結集させ、ルキフェルがソロモンの笛を奪った事実は無かった事にする方針らしく ソロモンの笛と見えない学校を見つけ出した者には褒美をとらせると宣言していた。 そんな事があった後の人気のない崖の上。そこに弁髪に丸顔の中国服を着た男がたたずんでいた。 男の名はトン・フーチン。 トン・フーチンは側にいる大人の丈ほどある顔を持つ大口童子と事ある毎に楽器を鳴らす子鬼達にソロモンの笛を奪い、 悪魔界の外交官にしてもらうのだ、と言った。 なかなか平和的な願いだと思いきや、外交官とは東嶽大帝が人間界を支配した後に建てられるであろう悪魔領事館で 東嶽大帝に代わり人間を治める役職だと説明している所から察するに、人間界支配を望んでいるようである。 奥ゆかしいのかずうずうしいのか分からないトン・フーチンは決意も新たに月を睨んでいた。 一方、見えない学校が戻り住居問題が解決した悪魔くん達は、東嶽大帝から守る為樹海の奥深くに 見えない学校を移動させていた。 周囲は霧深い森、更に辺りを魔眼が絶えず見張っている。これなら皆で十分守れる事を確認した悪魔くんは ひとまず家に戻る事にし、メフィスト二世と百目も悪魔くんのボディーガードという名目で同行する。 人間界の生活が気に入ったのか、二人だけズルイと不満そうに言う鳥乙女にこうもり猫は 「いいじゃないの鳥乙女!このこうもり猫ちんのそばにいられるだけで幸せでゲショ?ん〜〜」と言いながら口をタコにして 顔を寄せる。が、その結果は愛の肘鉄を顔面にプレゼント。 そんなごく日常的なやりとりの後、悪魔くん達は人間界に戻っていった。 そして次の日の朝、完全爆眠状態の悪魔くんと百目。 エツ子がいつものように起こしに来たが、悪魔くんは起床する気ゼロ、 百目も99の目がまだ眠っていると眠気に支配された者特有の捻くれた言い訳を言って布団に潜り込んだ。 無論そんな怠慢が許されるはずも無く、小学生とは思えないだらしなさの二人にエツ子の怒声が降り注ぐ! 「二人とも、おっきろーーー!!!」 その必殺の一撃は寝ぼけた兄と居候の目を一撃で覚まさせ、何故か押入れで寝ていたメフィスト二世もすふまを倒して 転がり落ちてきた!目をチカチカさせながらメフィスト二世は一言、「相変わらずの大声だなぁ。」 こうしてようやく学校に行った悪魔くん達。後に残ったメフィスト二世は「このラーメンを食べられるだけでも、 悪魔くん家はいいぜ!」と一人居間でラーメンを食べていた。 その平穏な時間を破るようにごめんくださーいという声とノックの音が。 今誰もいないんだけどなぁ、と入り浸りの果てにめでたく留守番役を任されるようになったメフィスト二世は はいはーい、今開けますよー。と妙に所帯じみた台詞で玄関を開けた。 が、そこには扉いっぱいの顔が! 何かの冗談のようなこの光景に思わず飛び退くメフィスト二世。 何者だと問うと、そのビックフェイスの大口童子は悪魔くんに東嶽大帝の信仰を薦める為に来たと言い、 そういうお前こそ誰だと言葉を返した。 「悪魔くん率いる十二使徒中のナンバーワン!メフィスト二世様を知らねえのか。んッ?」 「知らん。」 歯を光らせながら気取って宣言したのにこのつれない態度。 更に自分は東嶽大帝の手下であり、もうすぐ四界全員が東嶽大帝を信仰するようになり悪魔くんこそ異端となるのだ、と 少々つっぱしった思想を言う大口童子に、自尊心を傷つけられたムカツキも手伝って「さっさと出て行け!」と怒鳴る メフィスト二世。 しかし大口童子は逆に「どうしても嫌だと言うのなら大声だすぞ。」と脅しにはいる。 メフィスト二世は「大声ならエッちゃんので慣れてる。」と余裕の態度だったが、 大口童子の大声はエツ子の300倍はありそうな破壊的大声だった! その声の凄まじさは飛ぶ鳥を落とし、埋れ木家の冷蔵庫を開けさせる程で、そんなものを近くで聞いてしまったメフィスト二世は たまらず意識喪失、そのまま倒れこんでしまった。 口ほどにも無い奴、と笑う大口童子の脇から、特別製の耳を持っているのか全く平気な顔をしたトン・フーチンが現れ 次は信者を集めて又やって来る、首を洗って待っていろと悪魔くんに伝えろと既に遠くに行ってしまっているメフィスト二世に 告げるとそのまま立ち去っていった。 メフィスト二世失神のまま時は過ぎ、学校から帰ってきたエツ子が硬直したメフィスト二世を発見した。 白目をむいているメフィスト二世を見て一言。 「うふっ、可愛い寝顔!」恋の力は偉大です。 エツ子はこんな所で寝ていたら風邪をひくわ、と最初は優しく起こそうと小声でメフィスト二世を呼ぶが、三途の川一歩手前の メフィスト二世はぴくりともしない。 「メフィスト二世さん、起きて。二世さん、二世さん・・・二世ッ!!」 ショックの追撃で目が覚めたメフィスト二世はまだ耳がジンジンいっていたがこうしちゃいられない、と慌てて外に飛び出し 悪魔くんの元へ飛んでいった。 そしていつもの洞窟でピクシーに耳の治療をしてもらっているメフィスト二世から、事の次第を聞いた悪魔くんは 大声を出す悪魔といわれてもそんな悪魔に心当たりは無い。そこでヨナルデを呼び出す事にした。 その頃ファウスト博士の代理を務めていたヨナルデはこうもり猫をこき使いながら書物の整理をしていた。 しぶしぶ働くこうもり猫、高く積まれた本を持ちながらも本の影から小声で「ヨナルデなんてどっかに消えちまえ〜。」と呪詛を 呟く。 「何をぶつぶつ言っていんだわさ、こうもり猫!」 ヨナルデは噴火寸前! その時召喚が発動し、「消えちまっただわさ!ホントに!」と驚愕するこうもり猫を残して悪魔くん達の前に現れた。 しかし目を閉じて怒りパワーを充填していたヨナルデは全く気付かず大噴火! 「文句ばっかり、言わないだわさーー!!」 直りかけた鼓膜に再び大ダメージを受けたメフィスト二世、痛みが再びコンニチワ。 出てくるなりいきなりシャウトした事を笑ってごまかしたヨナルデに全く素反応の悪魔くんは大口童子の事を尋ねた。 さすがに学者と言われるだけあってヨナルデの辞書に大口童子の事が書かれていた。 その本によれば大口童子は相手の良心を食べてしまう能力を持っているらしいので、失神しただけですんだとは 運が良かった、と言っているとなにやら洞窟の外が騒がしい。 見にいってみると外は「東嶽大帝様を信仰しよう」「信じる者は救われる」と空ろな目でぶつぶつ唱える あらゆる意味で危険な町人で埋め尽くされていた。 メフィスト二世に宣言したとおり、町に出向き大口童子が手当たりしだいに町人にかぶりついて良心を抜き取り 信者を増やし、そして今回も例外なく巻き込まれた貧太の案内でここに辿り着いたのであった。 自分を「悪魔大使」と名乗り早くもその気のトン・フーチンの名前を聞いた悪魔くんは、 トン・フーチンは善良な白悪魔だった事を思い出し、彼もまた大口童子に良心を食べられた事を知った。 悪魔くんの思いを知らないトン・フーチンは悪魔くんにソロモンの笛を渡すよう言い、 そして悪魔くんが秩序を乱すので東嶽大帝が立ち上がり混乱を防ごうとしている、 東嶽大帝を信仰する事こそ死者と生者の間に平穏をもたらす事なのだ、と大口童子以上の凝り固まった発言で糾弾した。 悪魔くんが自分達は人間も悪魔も妖精も皆仲良く暮らせるよう戦っているのだと言っても全く耳を貸そうとせず、 埒が明かないと判断したトン・フーチンは超能力を使い、悪魔くんごとソロモンの笛を奪おうと悪魔くんを宙に浮かび上がらせた。 空中で手足をバタつかせる悪魔くんの足を慌てて百目とヨナルデが掴む。 メフィスト二世が魔力で対抗しようとすると、すかさず貧太と情報屋がトン・フーチンの盾となってしまう。 邪魔をするな!と魔力を使いそうになるメフィスト二世を宙に浮いても冷静さを失わない悪魔くんが制止させた。 メフィスト二世は仕方なく悪魔くんを引っ張りながら超能力が効かない魔法陣の中まで退却した。 だが町人はどんどん迫ってくる。あせる悪魔くん達だったが、ピクシー達が睡眠線香を使い町人を次々と眠らせていった。 しかしこの町にこんなに人がいたのかという程人がいる為とても手持ちの線香だけでは足りない。 こうなれば大口童子の腹の中にある良心を取り出すしか方法がない、と危険極まりない案を言う悪魔くん。 ヨナルデはひええと怯え、一歩間違えれば自分達も良心を食べられてしまうと言うが、悪魔くんはこれしか方法はないと言い 幽子を召喚し、次にメフィスト二世に大口童子の顎を外して欲しいと頼んだ。 やってみるぜ!と引き受けたメフィスト二世は大口童子に向かって「大声ならこっちにも負けない奴がいるぜ! 一つ勝負しようじゃないか!」とヨナルデへの復讐の香りがしないでもない台詞で挑発。 その後ろでいきなりのご指名に思い切り逃げ腰のヨナルデを「いいからいいから!」とヨナルデの意見を さらっと聞き流しながら悪魔くんと百目が押し出し、無理矢理大口童子と対面させた。 己のアイデンティティーである大声勝負を拒む訳が無い大口童子。 さっそく鼻息も荒くやって来て自慢の大声を出そうと口を180度近く開け、大きく息を吸い込んだ。 その時を待っていたメフィスト二世は、魔力 ツボツボ打ちで顎のツボにステッキを打ち込み顎を閉められないようにし、 メフィスト二世を先頭に一つ繋がりになり一気に大口童子の胃に侵入した! 大口童子の胃の中は別の空間に繋がっているかのように広々としていた。 しかし胃の中である事に変わりは無く、常に消化液が落ちてくる百目とヨナルデの足の裏が気になる危険なエリアだった。 一方外では拷問状態の大口童子に刺さっているステッキを取ろうと奮闘していたトン・フーチンが業を煮やし こうなれば、と顎が外れて抗議出来ないのをいい事に超能力で大口童子の腹を暴れさせはじめた。 トン・フーチンの超能力で激しく揺れ動く胃の中を何とか進んでいくと、透明な膜に包まれた町人とトン・フーチンの良心が 淡く光りながら一塊になって置かれているのを遂に発見した。 悪魔くんは幽子に自分がソロモンの笛で良心を呪縛から解き放つので、照魔鏡でそれを吸い取るように言うと ソロモンの笛を吹き始めた。 その動きを知ってか再び強制消化活動が始まり、胃の粘膜が触手のように伸び悪魔くん達に迫りだした! ステッキがないメフィスト二世は魔力(?) ガリガリピクシーでピクシーを放り投げ、百目も百目フラッシュで二人を守る中 ソロモンの笛に導かれ、良心が一つ、また一つ浮かび上がってきた。 それをすかさず幽子が照魔鏡で吸収、そしてすばやく撤収した! すると大口童子は穴の空いた浮き輪のようにしわしわと小さくなり、最後には消えてしまった。 大口童子は良心の蓄えがなくなると、存在そのものも消えてしまうのだ。 トン・フーチンは形成悪しとみて慌てて逃げようとしたが、「忘れ物だ!」という言葉に思わず振り返る。 その隙をついて幽子が照魔鏡を掲げ、トン・フーチンに良心を返した。 良心の戻ったトン・フーチンは今までの記憶はなかった。悪魔くんから説明を受け詫びを入れるトン・フーチン。 そして魔界ではどんどん白悪魔が減っているのでソロモンの笛は大切にして欲しいという。 悪魔くんは白悪魔が平和に暮らせるようにしてみせると約束し、その言葉を信じてトン・フーチンは 良心を食べられていたのか不明な子鬼達と共に東嶽大帝の手の届かない場所に隠れていった。 トン・フーチンが去った後、幽子は皆の魂を返し始めた。 その間にヨナルデはメフィスト二世と百目に引き続きボディーガードを依頼して見えない学校に帰っていった。 こうして無事一件落着したのであった。 目次に戻る |
打倒東嶽大帝の為、昼夜問わず究極の六芒星を探し続ける悪魔くん達。 救世主としては賞賛すべき行いだが、その為に大変な事態を発生させてしまう。 事の始まりは悪魔くんとメフィスト二世がエツ子と映画に行く約束をすっかり忘れてしまった事から始まった。 綺麗さっぱり忘れている二人に2週間も前から約束していたのに、と泣きそうになるエツ子。 新しい洋服と髪型を変え、精一杯おしゃれしているエツ子を見ればどれだけ楽しみにしていたのか分かりそうなものなのに、 悪魔くんとメフィスト二世は「ごめんよエツ子、大切な仕事があって今日は駄目なんだ。」「今度きっとつきあうよ。」と 二人揃ってさらっと反故。 このあんまりな仕打ちに「仕事仕事って、悪魔ごっこして遊んでるだけのくせに、もういいわよ!」と部屋を飛び出してしまう。 名前を呼ばれなかった百目は「エッちゃん可哀相だもん。」と同情するが、家族より使命を優先する仕事の鬼の悪魔くんは でも仕方ないんだ、の一言ですませ再び本に向かいだした。 部屋を飛び出したエツ子は兄が駄目なら、と惰眠を貪っている父と映画に行こうと直談判していた。 しかし布団という楽園にいる父は「映画なら真吾と行ってくればいいじゃないか。」と全く動こうとしない。 「お兄ちゃんが駄目だからお父さんに頼んでるんじゃない!」埋れ木家内の地位構造が垣間見える瞬間です。 そこに埋れ木母もやって来て映画に行ってあげろとエツ子の援軍になるが、仕事よりも家族よりも睡眠をとった父は 仕事で忙しいんだ、とお決まりの逃げ文句を口にし「こうしている間も漫画のアイディアが〜・・」と呟きながら布団芋虫となって そのまま逃げてしまう。 「男の人っていつもいつも仕事仕事って勝手な事ばっかり!」 ゴゴゴゴゴ・・と怒りの炎が燃え上がる二人。堪忍袋の緒が今まさに切れようとしていた! そんな事があったとは露知らず、一仕事終えて居間に入ってきた悪魔くんが最初に見たものは、困り果てた父の姿だった。 視線を動かせば、「男はズルイぞ!」、「ストライキ決行中!」と書かれたプラカードを持ちはちまきを締めた母と妹の姿が。 朝からの男達の仕打ちに対し反旗を翻したのだ。わざわざプラカードまで作るあたりから怒りの強さが伝わってきます。 ストライキという事で当然夕飯は作っていない。 「機嫌を直して夕飯作ってくれよ。」と父が懇願しても返答は二人揃って「べー」。 その時実にタイミング悪く、テレビで女性評論家のアムリタという女性が「世の女性達よ、不平不満を爆発させるのです!」と 熱弁を振るっていた。 鼻息荒く画面に釘付けになる二人と対照的に「ひえ〜!まだこれ以上強くなるの?クワバラクワバラ・・」と青くなって退散する父。 世界の為でなくラーメンの為に今まで本とにらめっこしていたメフィスト二世は「死神屋のラーメンでも食いにいこうっと・・・。」と ガックリと肩を落としてフラフラと浮かびながら出て行く。 それを「気をつけてね」と送った悪魔くんはエキサイトする母娘を見て諦めたように「カップ麺でも食べるか。」と呟いた。 作る気はないようです。 次の日、悪魔くん達が居間に行くと父が諦めの境地の表情でカップラーメンを啜っていた。 「今日もカップ麺かもんー・・。」ガックリとする百目と悪魔くん。だから作りましょう。 そんな男達の落胆を余所に埋れ木母娘は昨日のテレビでにわかに女性地位向上に目覚めた貧太母、キリヒト母、 悪魔くんの担任の先生と合流し、全員で仲良く体力増強の為マラソンをしていた。 しかし長年の三色昼寝付きで体は完全に錆付いており、エツ子を除く全員がへたばり早くも諦めモードにはいっていた。 「今からだって大丈夫だってば!」と若さ溢れる台詞を言うエツ子。その背後で「そう、その子のいうとおり。」と同調する声が。 振り向くと、そこにテレビにでていたアムリタが佇んでいた。 「魔女になるのよ。」 町外れの洋館に招きいれたアムリタは突拍子のない事を言った。 魔女になればどんな好きな事でもしたい放題だ、と言うのだ。 しかし一般市民の5人は半信半疑。 「うちの真吾じゃあるまいし、信じられないわ。ねぇ?」という埋れ木母の言葉に同意する4人。 教師とPTAにも悪魔くんの事は知れ渡っているようです。 それならまず魔女の道具を貸してあげるからそれで試してみればいい、と言い、いくつかの道具を乗せたワゴンを5人の前に置いた。 顔を見合わせる5人。アムリタは背を押すように「さあ、どれでも好きなのを選んでも良いのよ。」と言った・・。 時は登校時間となり、悪魔くんは貧太に昨日からはじまったストライキに頭を悩ませている事を話していた。 「エツ子との約束破った僕も悪かったんだけどさ。」とさすがに自分のそっけなさを反省している悪魔くんに 貧太も自分の母親も昨日のテレビでかぶれて父が困っていた、と言った。 「どこも一緒だね。」と互いに苦笑しあう二人。 悪魔くん達がそんな事を話していたその頃、家に戻ってきたエツ子は完全に遅刻だわー!と大慌てで家を飛び出していた。 その時先程選んだほうきを持っていた事に気付き駄目で元々、とほうきにまたがり呪文を唱えた。 するとほうきは宙に浮き、空を飛び出した!本当に空を飛んでいる事にエツ子は大ハシャギ。 途中で同じく遅刻しそうになりダッシュ中の先生を捕まえ、一緒に空のドライブとしゃれこんでいた。 エツ子達が魔法に夢中になったのと同様に母親達も借りた魔法の品々で己の欲望を満たしていた。 埋れ木母は犬を撃退する為、貧太母は八百屋の大安売りの野菜を獲得する為、キリヒト母は電車の座席に座る為、と 例えその使用目的が涙が出る程地味でささやかなものだったとしても、魔力に魅入られた事は確かで 5人はもっと魔法を使いたいと望むようになっていた。 すっかり魔女になる事を決意したエツ子と先生は、「魔女が女の時代を開くのね!」「男なんてくたばっちゃえーっ!」と 危険な方向に偏る言葉を高らかに叫びながら、死神屋のラーメンでようやく人心地がつき雲の布団で昼寝をしていた メフィスト二世の傍を通り過ぎていった。 我が目を疑う光景を目撃してしまったメフィスト二世は大慌てで貧太、百目と下校中の悪魔くんの元へ駆けつけ開口一番 「魔女のほうきがエッちゃんに乗って飛んでった!」 もとい 「エッちゃんが魔女のほうきに乗って飛んでった!」と報告。 とても信じられなかった悪魔くん達だったが、とにかくメフィスト二世に乗ってエツ子が飛び去った後を追跡していた。 すると今までに見たことが無い洋館が町外れに建っているのを発見し、調べる為そこへ向かった。 その頃、エツ子達同様魔女になる事を望んだ母親達も洋館にやってきていた。 キリヒト母はまだ魔女になる事を迷っているようだったが、皆でなれば怖くない的ムードに流され結局魔女になる事を決意した。 ちなみにキリヒト母は聖職者の妻です。 「お願いしま〜す。」と魔女ってどんな存在か知っていますかと問いただしたいような明るい口調のエツ子達。 アムリタは玄関先の階段下の隠し階段から地下へ案内した。 そこは周りを壁に覆われた礼拝堂のような場所で、正面には山羊顔をした巨大な悪魔の彫像が鎮座し、 しかも出口に通じる一本の道以外は奈落に通じていそうな深い穴で取り囲まれている健全さがカケラも感じられない雰囲気 で満ち満ちていた。 そして魔女誕生の儀式が始まったが、アムリタに魔女になる事は悪魔に魂を売り渡す事だ、と言われ ようやく事態の危険性に気付いた5人。 ヒキガエルを祭壇に掲げる地点でまともじゃないのが分かりそうなものだが、5人は慌てて我先に逃げ出そうとした。 しかしアムリタに阻まれてしまう。正体を現したアムリタの後ろで地上へ続く唯一の道が降りていく。 5人に迫るアムリタ!エツ子はたまらず悲鳴を上げた! その声は丁度玄関にやってきた悪魔くん達の耳に届いた。 階段の下から悲鳴が聞こえた事を確認すると、メフィスト二世が魔力 マシンガンパンチでよそ宅の階段に巨大な穴をあけ、 全員で地下礼拝堂へなだれ込んだ。 そこで悪魔くん達はエツ子達が魔女誕生の儀式を受けているのを目撃した。 驚愕する悪魔くん達の耳にアムリタの笑い声が聞こえた。怒るメフィスト二世が稲妻電撃を放つがアムリタの体を すりぬけてしまう。 何者だ!と叫ぶ悪魔くんに答えるようにアムリタの顔が剥がれ、中から黄色い不気味な仮面の様な顔が現れた。 「お前は透明魔人!」 すぐに正体を知った悪魔くんに透明魔人は勝ち誇ったように笑いながら、世界中の女を魔女にして自分の意のままに操ってやる のだ、と言い、儀式を見守る妖婆達に魔女誕生の儀式を進めるよう命令した。 悪魔くん達は必死に逃げるよう叫ぶが、既に操られているのか5人は微動だにせず、 額に魔女の印を描かれヒキガエルのスープを飲んでしまった。 これで魔女誕生の儀式は全て完了した!と宣言した透明魔人は魔女となったエツ子達に悪魔くんを倒すように命令を下した! ショックを受ける悪魔くん達を余所に魔女となったエツ子達はほうきに乗って一斉に襲い掛かってきた! エツ子達と戦うなんて事はできない、透明魔人を倒すしか無いと判断した悪魔くんは地上に戻り魔方陣を描き、 幽子を召喚した。 そして幸か不幸か魔法は使わず肉弾戦に出ているエツ子達にボコボコにされているメフィスト二世と、 その二世を見て「母さんを打たないでねー!」とメフィスト二世を気遣う所か鞭打つような台詞を言う貧太の元へ戻ってきた 悪魔くんは、幽子に照魔鏡で透明魔人の姿を映し出すよう指示した。 魔力を使って姿を消していても照魔鏡なら映し出す事ができるはず・・。 しかし地下とは思えない広々とした礼拝堂では照魔鏡の光は懐中電灯程度の小さな光。 なかなか透明魔人を捕まえる事ができない。 幽子は豆ユーレイ達に透明魔人を誘い出させるよう頼んだ。 豆ユーレイ達は「とうめいまじん、とんまじん、スケスケ魔人、やーいやい」と小学生レベルの歌ではやし立てながら空中を 巡回しだした。 その小学生レベルにしっかり腹を立てた透明魔人はご丁寧に一人一人豆ユーレイを叩き落としだした。 豆ユーレイの尊い犠牲を無駄にしないよう素早く幽子が照魔鏡で照らし、透明魔人の姿を捉えた! 「しまった!」誰だってわかります。 「メフィスト二世、死出のメロディーを!」 悪魔くんに言われずっとボコボコにされ続けていたメフィスト二世は魔力 死出のメロディーを発動させた! 透明魔人は自分の負けを認めながらもし一度魔女になったものは二度と元へ戻る事ができないのだ、と不適に笑いながら消えていった。 同時に洋館も消え、意識を失ったまま横たわる5人を前に貧太は皆もう元には戻れないのか、と悪魔くんに不安げに尋ねた。 悪魔くんは白魔術で元に戻す事が出来るかもしれないと魔法陣を描き呪文を唱え始めた。 そして情けない顔でベソをかく貧太が見守る中、エツ子達の額から魔女の紋章が剥がれ、全員無事悪魔の呪縛から逃れる事 ができたのだった。 時は過ぎて夕刻、今度は魚屋がタイムバーゲンを行っていた。 そこへダッシュでやって来た貧太母とキリヒト母は何で山中で寝ていたのかしら、と呟きながら戦場へ突進していった。 その勇姿を頼もしそうに見ていた貧太は「魔女にならなくても母さん達は強いや!」と安心していた。 そして埋れ木家では無事和解がなされ、父と息子の今までの反省と感謝を込めた埋れ木家特製カレーが晩餐に出された。 突然の上げ膳据え膳に逆に居心地悪くしているエツ子にメフィスト二世は4枚の映画のチケットを見せ、 「今度こそ皆で行こう、なっ。」とウインク。エツ子は思わず顔を綻ばせながらうん、と頷いた。 そして皆で仲直りの晩餐が始まり、父と息子と居候が丹精込め作ったカレーを一口。 が。 「・・ん゛っ」 「・・・んぐっ」 「・・・む゛む゛っ」 「からーーーーーーい!」 和解の味は超激辛となった埋れ木一家でありました。 目次に戻る |
魔界の奥深くにある悪魔城。 段々背詰まってきた東嶽大帝は、打開策として十二使徒並びに自分に背いた悪魔に賞金を賭けた。 部下は使い物にならんという思いがちらりと窺えるこの告知に、欲深い黒悪魔の賞金稼ぎ達は一気に色めき立っていた。 一方人間界の埋れ木家で埋れ木母、エツ子、百目は学校行事の写生に出かける為のお弁当のおにぎりを作っていた。 そこに寝癖爆発で睡眠不足ですとありありと顔に描いている悪魔くんが現れると、埋れ木母が又悪魔だか魔法だかの研究で 夜更かしをしていたのか、と渋い顔をした。 悪魔くんはどこ吹く風だが、百目は大事な事だもん!と弁護し、だから悪魔くんのお弁当は僕が作ったもーん!と顔ほどある 巨大おにぎりを差し出した。 「それじゃサッカーボールだよ。」と笑い合う息子の夜更かしの原因以外はごく普通でほのぼのとした光景を天窓から 見つめるひとつの顔。 「こりゃ今日はラーメンごちそうしてもらうのは無理だな。」 今日も埋れ木家にラーメンをたかりに来たメフィスト二世はがっかり顔で埋れ木家屋根から去っていった。 そして場所は移って魔界の片隅にある湖の傍。 ここはまだ黒悪魔に知られていないようで、黒悪魔の手から逃れた者達がひっそり隠れ住んでいた。 第21話でヘドラに捕まっていたチビコーモリのカップルは不安のかけらも感じられないアツアツムードで戯れ、 その傍らで度重なる失敗で悪魔城にいられなくなり逃亡したガハハ三人組が幸せ一杯の二人とは正反対の腐りきった顔で 釣りをしていた。 悪魔城に戻れない今、これからどうしようかと三人でぼやいていると第12話で魔火の姿から開放された黒小人が現れた。 かつて同じ上司を持っていたという事もあってか何時の間にか知り合いになったらしい黒小人は賞金の件を話し、 さらに賞金稼ぎの気球魔人とピラドクロが動き出したらしい、と嬉しくない情報を伝えた。 自分達がまさしくそのターゲットになるじゃないか!とビビりだしたその瞬間、湖の近くの火山が大爆発を起こした! ひええっ、と地面にうずくまる一行。長い地響きの後ようやく地鳴りが収まり恐る恐る顔を上げると、火口から立ち上る黒煙の中 から巨大な悪魔が現れた! 「き、気球魔人だーっ!」 ガハハ三人組はぎゃーっと叫んで森の中に逃げ込むが、その行く手を気球魔人の相棒のピラドクロが地中から姿を現し 挟み撃ちにしてしまう。 前門のピラドクロ、後門の気球魔人。ガハハ三人組は三人揃って懺悔のポーズで自分達は東嶽大帝に逆らうつもりはない から見逃してくれ、と命乞いをする。 爆発と煙幕と派手な登場をした気球魔人は、ガハハ達のような雑魚は最初から狙っていない、それより賞金額が高いメフィスト 二世をここにおびき出せたら悪魔城に帰れるよう東嶽大帝に口を聞いてもいい、と取引を持ちかけた。 十二使徒中最高の腕利きと言われるメフィスト二世なら自分の相手に相応しい、と姿同様自信もビックな気球魔人に 「ありがとうございます、気球魔人さま〜!」と土下座をしたガハハ三人組は先程しおれていたのが嘘のように復活し、 ガハハ、ガハハとテーマソングを歌いながら軽快な足取りで出かけていった。 先程起こった地震は相当規模の大きなもので、その余波は見えない学校が隠れている付近にまでやって来た。 強烈な振動により大地にひび割れが生じ、見えない学校がその地割れにズレ落ちてしまった! 大きく体を傾かせ魔眼も一つを除いて全て眼を閉じてしまう見えない学校。 その中で十二使徒達は地震の調査をした方が良いのではないのか、と話し合っていた。 しかし、現在一つしか使用できない魔眼は悪魔くんにこの緊急事態を教える為に使わなくてはいけない。 かといって自分達が表立って動けば東嶽大帝に見えない学校の所在がバレる危険がある・・・。 しばし思案した後ヨナルデはこうもり猫を調査員に指名した。 指名理由は万が一捕まっても白悪魔と黒悪魔の中間の灰色悪魔と思われているこうもり猫なら捕まっても見えない学校をクビになったと言い訳ができるから。 こうもり猫は皆の為に尊い犠牲になれと言わんばかりのこの発言に猛烈に反発、 「アッシは正義に燃える純白悪魔っ。」と主張するが鳥乙女に髭をひっぱられながら早く行け、と言われ結局しぶしぶ出発した のだった。こうもり猫以外誰も異議をも唱えなかったという事は今だ十二使徒内での地位向上は成されていないという事。 哀れ・・。 魔界でこのような事態が起こっている時、悪魔くんは連日の睡眠不足から写生中につい居眠りをしてしまっていた。 百目に起こされ眠い目をこすりながら目を開けると、目の前に魔眼が! 寝起きにものすごいモノを見たおかげで一気に意識が覚醒し、大慌てで貧太達から魔眼を隠そうと両手を広げて貧太達の前に飛び出した。 しかし「悪魔くん、何やってるんだよ、邪魔だよ。どいてよ」と珍しく氷のように冷たい貧太の言葉に 魔眼は普通の人間には見えない事を思い出しほっとする悪魔くん。 「そりゃ普通じゃないよ、悪魔くんは。」なぜか今日は悪魔くんに厳しい友達三人に気付かれないように 悪魔くんと百目は互いに目配せして抜け出して近くの林に行き、魔眼経由でヨナルデから見えない学校のピンチを聞かされた。 このままでは見えない学校が危ない!悪魔くんは百目と共に魔界トンネルで見えない学校へ急いだ! 一方三万年に一度と言うほどのこの大地震の余波は魔界の一角にある死神屋にまで届いていた。 埋れ木家で食いっぱぐれ、死神屋でラーメンタイムのメフィスト二世は「しつこい地震だなぁ。まだ揺れてやがる。」と呟きながら 店内が揺れたせいで梁に吊るしていてた蛙やイモリや毛虫がボトボト落ちたラーメンを全く気にする風でもなく汁まで 残さず平らげていた。 その時店内にガハハ三人組が騒々しく喋りながら入ってきた。 自分を罠にはめようとしているとは知らないメフィスト二世は、急に現れたこの三人組を怪しみ密かに動向を窺っていた。 そんな中、ガハハ達の作戦が始まった! まず「やっぱり魔界広しと言えども一番強いのはメフィスト二世だな!」と露骨な誉め言葉で誉めちぎって 悦に入らせ油断させた 後に「メフィスト二世は気球魔人が恐ろしくて逃げ回っていう噂ですぜー」と天より高いプライドにメガトンパンチ! 「誰が逃げ回ってるって!どこにいるんだその気球魔人ってのは!」メフィスト二世、悲しいまでにチョロイです。 そしてガハハ達に火山口へ連れてこられたメフィスト二世は、そこで縄でグルグル巻にされて火山の真上に吊るされている こうもり猫を 発見した。調査に出かけた先であっさりピラドクロに掴まってしまったのだ。 「あっしは見えない学校を追い出されただってばー!十二使徒をクビになったんすよ!正真正銘の真っ黒悪魔なんだからー!」 とヨナルデが言ったそのままの言い訳をナチュラルに叫んでいたのだが、こうもり猫はピラドクロのごほうびのエサになるのだ と告げられバッドエンド確定か?と思っていた時にメフィスト二世の姿を発見し「あっ、メフィスト二世ちゃま! 助けにきてくれたんでゲスね!」と少々語尾がおかしくなりながらも俄然顔が明るくなったこうもり猫。 メフィスト二世はこうもり猫と檻の中に入れられた黒小人達を発見し、これが罠である事にようやく気付いた。 ガハハはこれで悪魔城へ戻れると有頂天になるが、もちろん気球魔人がそんな親切をする訳もなくピラドクロに捕まり 黒小人達の檻の中に入れられた。 思いきりよく使い捨てにされたガハハをよそに気球魔人はメフィスト二世に勝負を挑み、攻撃を仕掛けてきた。 俺は火山のエネルギーと連動し力を得るのだ!と豪語する気球魔人は名のとおり体を気球のように膨らませた。 それと同時に火山の動きも活発になる。 そうなると気球魔人は一歩も動けないんじゃないのかという思いがよぎるが、このままではますます地震の規模が 大きくなってしまう! その時連絡をしないこうもり猫の様子が気になった悪魔くんが派遣した魔眼がやってきた。 この地震は気球魔人のせいだと知った悪魔くんは魔眼を通してこちらの事情を伝え、メフィスト二世に こうもり猫の事には触れず気球魔人を倒すよう頼んだ。 そしてメフィスト二世に地震の根源除去を頼んだ後、十二使徒達が外で見えない学校を縄でひっぱって地割れから引き出そうと 頑張る中、悪魔くんは司令室でソロモンの笛で見えない学校に語りかけ始めた。 『見えない学校・・君はまだ生きているんだよね・・・もう一度、僕達に力を貸してくれ・・!』 一方火口側では、メフィスト二世が時と共に強大化する気球魔人の前に苦戦していた。 そして一瞬の隙をつかれ毒ガスを正面から浴び全身黄色になって失神、そのまま火口へと失速してしまう! とっさにこうもり猫が口でくわえ、マグマダイビングは免れたものの、今度は縄が切れそうに! じりじりと切れていく縄。そしてついに縄が完全にきれ、二人揃って火口の中へ!・・・と思ったが、寸前で体が止まった。 密かに檻をかじり取り脱出したチビコーモリ達がこうもり猫の所へダッシュし、間一髪でロープを掴んでくれたのだ。 「逃がさへんで!」と怪しげな関西弁を話すピラドクロが黒小人達を捕らえようとするが、ガハハ達がピラドクロの尻尾をひっぱり 妨害する。 気球魔人は火口に上がってきたメフィスト二世もろともまとめて始末しようと毒ガスを放つが、 もう許さへんで!と怒りの突進をしてきたピラドクロにタイミング良くかかり、ピラドクロはマグマの中へ。 気球魔人は舌打ちしながら「ドジなピラドクロめ」と言った。 どう考えても気球魔人のせいだが、気球魔人の巨大化は進む一方で、これ以上大きくなれば火山が大爆発してしまう。 こうなれば、と最後の切り札魔力 ツノ電撃を使うがそれすらも通用しない。 勝利を確信した気球魔人は万策つき満身創痍のメフィスト二世を体の中に取り込み、じわじわと毒ガスで苦しめ始めた。 毒ガスを全身に浴びながらもメフィスト二世はある事に気付いた。 『そうか・・・奴はガスの塊なんだ・・・。』 そこでメフィスト二世は大きな賭けにでた! 「た、頼むぜ!魔力 絶対零度!」 絶対零度の氷で自分の身を守りながら気球魔人と共にマグマの中へ飛び込んだのだ! 『ガスが燃え尽きて、エネルギーを使い果たしてしまえ・・・!』 ガスに引火すれば大爆発するんじゃないかと思うがそんな惨事は起こらず、気球魔人は全身を炎に包まれ、断末魔の悲鳴 をあげた! マグマが無くなり深い穴になった火口を覗き込むこうもり猫とガハハ達。 メフィスト二世は無事なのか・・・? 不安に思っていると、奥からメフィスト二世が現れた! 「よくやってくれたぜーっ!あああー泣けるぜぇー!」とこうもり猫が号泣するのを筆頭に皆大喜び! 「これで火山の怒りも静まる筈さ。も、もう心配ねぇ!」疲れきった様子だが、それでも笑顔でメフィスト二世は言った。 同じ頃、悪魔くんのソロモンの笛に共鳴した見えない学校は自らの力で動き出し、見事地割れから脱出する事ができた。 全て解決したものの行き場をなくしたチビコーモリ、黒小人、そして引け目を感じてこうもり猫の背に隠れているガハハ三人組は メフィスト二世とこうもり猫に連れられて見えない学校にやってきた。 事情を聞いた悪魔くんは快くここに隠れているといいと言った。 そして一気に賑やかになった見えない学校を見上げながら「あとは究極の六芒星を完成させるだけだね。」と 呟くのだった。 目次に戻る |
人間界の埋れ木家は今日も平穏そのもの。 しかし、テレビのニュースでは謎の海難事故が多発していると不穏なニュースを伝えていた。 そのニュースをのんびりと見ていた埋れ木父は、ふと息子の姿が見えない事に気付き埋れ木母に尋ねた。 埋れ木母が古本屋に行っていると答えると、「古本屋かぁ、なかなか渋い趣味だな。」と言ったが、 横で体操をしていたエツ子が鋭い発言で水を差した。 「どうせ悪魔の研究よ。お兄ちゃんが漫画以外に他の本読むわけないもん。」 兄の事を良くご存知で。 エツ子の推察どおり、悪魔くんはメフィスト二世、百目と共に古本屋で究極の六芒星に関する書物を探しまわっていた。 大いなる使命の前に遠慮も公共マナーも吹きとんだらしく、朝から座り込んで古本を手当たり次第に読み漁る三人。 店主はそんな営業妨害の客にいい顔をする訳も無く立ち読みは迷惑だと言うが、百目とメフィスト二世は 「僕達以外に誰もお客さん来ないもん!おじさんも一人じゃ寂しいもん!」 「第一、俺達立ち読みじゃなくて座って読んでるぜ?」 と自分達が犯罪スレスレな事をしている自覚は微塵も感じていない様子。 真面目で品行方正な悪魔くんはと言えば、率先して本の山に潜って探索中。 良識派の看板はひとまず下ろしているようです。 「あった!」 お目当ての本が見つかりメフィスト二世らと共にしゃがみこんで内容を検討する悪魔くん。 その本にはソロモン王の遺した究極の魔法はソロモンの鍵と呼ばれ、ソロモン王の墓に眠っていると書かれていた。 ようやく六芒星の手がかりが手に入り、「さあ、もう一頑張りして調べてみよう!」と俄然張り切る悪魔くん。 ここを完璧に私設図書館と見なしているこのトドメの発言に「はあ、もう好きにしてくれ・・。」と呟く店主であった。 悪魔くん達が古本屋を襲撃している頃、こうもり猫は十二使徒と一気に増えた居候達の食料調達を終え、帰路についていた。 見張りの魔眼のそばを通り抜け、見えない学校に帰ってきた後、 一目で人間界産ではないとわかる独創的な色形の果実を皆に配りながら 「なんだって俺がコイツらの世話までしなきゃなんないの!」と不満の声を上げるが、 その直訴はよってたかって無視され、更に最初から決まっていたかのように居候の世話係に任命されてしまう。 哀れこうもり猫、流れ流されどこへ行く・・・。 しかしそのこうもり猫以外は平穏な一時は空の上に突如現れた無数の火の玉によって破られた。 段々近づいてくる火の玉を見てヨナルデは、セント・エルモの火のようだと言い、 謎の物体が近づいているにもかかわらず悠長に説明をし始めた。 その長口上を聞いている間にも火は近づき、それが幽霊船のマストの上にすずなりに灯っているセント・エルモの火になり、 更にその火が変化し、霧でできた幽霊ような姿に変わった。 この幽霊達はラルバと言う死後この世に未練や執着を残したまま死んだ幽霊の一種で、 東嶽大帝と見えない学校の全生命エネルギーを奪えば人間に戻させるという約束を交わしていた。 はやくも騙されムードが漂うが、こうもり猫が帰還する場を目撃し所在が分かったラルバ達はさっそく見えない学校の 生命エネルギーを奪おうと幽霊船で襲撃してきたのだ。 そして今、幽霊達が武器を手に一斉に襲い掛かってきた! 「見えない学校を狙っているんだわ!」 この急襲を迎え撃つべく戦闘体勢に入る十二使徒達。 ユルグはヨナルデ、幽子、ピクシー達に黒小人、ガハハ三人組と共に学校内へ避難するよう言った。 慌てて校舎に入るヨナルデ達にこうもり猫は、自分は世話係だからついて行かなければ、と自主的に世話係の 役目を果たすべく「さ、皆さん逃げましょう・・いやいや避難しましょーねー!ああ辛い」と建前と本音が入り混じる台詞と共に そそくさと 便乗し、校舎内に消えていった。 そしてヨナルデは悪魔くんを呼び寄せる為、魔界トンネルを転送させた! 魔界でこのような騒動が勃発したその頃、延々と古本屋に居座りつづけた悪魔くん達はようやく重い腰を上げた。 やっと帰ってくれたかとほっとする主人。しかしそれは早計だった。 「昼ご飯食べに帰るだけだもん!」と百目が顔を出す。 「すぐ戻ってきてやるから、なっ。」続いてメフィスト二世。 「じゃ、又後でね〜。」悪魔くんも悪魔の微笑みを浮かべつつ手を振って鬼のような台詞を言った。 この子悪魔集団に主人は「もう来なくて結構っ!」とヨヨヨと泣き崩れるしかないのであった。 そんな主人の傷心は知った事じゃない三人組は家への近道の裏路地を急いでいた。 その時悪魔くんのソロモンの笛が光りだした。 「見えない学校が僕を呼んでる・・・。」 同時に前方に魔界トンネルが現れ、見えない学校の危機を告げるヨナルデの声が響いた。 悪魔くん達は驚いて駆けつけようとしたが、その時無数のラルバ達が行く手を塞いだ! 「お前はラルバ!」 その言葉が言い終わるやいなや一斉に襲い掛かってきた! 狭い路地裏で大人数を相手にするには分が悪い。悪魔くん達は防戦一方になってしまう。 一方見えない学校では鳥乙女を中心に構成された戦闘組が各自の得意先技を繰り出し善戦するが、 数が多すぎてじりじりと押されがちになっていく。 その時幽霊船が見えない学校に体当たりをかけてきた! 皆慌てて地に伏せる。 幽霊船は電光を発しながら見えない学校をすり抜けていく。 恐る恐る立ち上がった十二使徒達は衝撃も被害も無くほっとするが、ユルグが見えない学校の先端にある生命玉の光が 小さくなっている事を発見した。 幽霊船はその船体で見えない学校の生命エネルギーを奪っていたのだ! 驚愕する一同。その時再び幽霊船が再アタックをかけてきた。 生命玉の光はますます小さくなってしまう。見えない学校大ピンチ! その危機はゆったりのどかに温泉に浸かっていた ファウスト博士に博士の持っている杖を通して届いた。 ファウスト博士は一緒に湯に浸かっていたメフィスト老と今の職業は温泉番のベルゼブブに出発を促した。 「見えない学校に大変な事が起こったようじゃ。メフィスト、もうのんびりしてはおれんぞ!」 今までも確実にのんびりしてられない状況でしたが。 そして今だラルバと乱戦中の悪魔くん達。その目の前で魔界トンネルが次第に小さくなっていってしまう。 「悪魔くん!こいつらをどうやってやっつければいいんだ!」と叫ぶメフィスト二世にラルバは幽霊の一種だから太陽の光に弱い はずなのだが、と答える悪魔くん。しかし今は雲に隠れて光が届かない。 何とかしてくれ、という頼みにメフィスト二世は魔力 ハットレンズを発動させた! ハット頭部がレンズになったメフィスト二世のシルクハットが雲を突き抜け、太陽光を反射させる! その光は地上の悪魔くん達の所まで届き、光を浴びたラルバ達は一斉に苦しみだした。 「今だ!」 全力で駆け出し悪魔くんと百目、そしてメフィスト二世もシルクハットを回収しながら魔界トンネルへ飛び込み、 一塊になって司令室に転がり込んだ! 悪魔くんの帰りを一日千秋の思いで待ちわびていたヨナルデは帰還に喜ぶ間もなく「あと一回襲われれば終わりである!」と 最終警告を発した。 幽霊船は目前。防ぐ事はできないのか? 悪魔くんはソロモンの笛を見つめて意を決し、身を翻して見えない学校の最上階へ駆け込みソロモンの笛を吹き始めた。 「悪魔くんが、来てくれたんだわ!」 ソロモンの笛の音があたりに響き渡り、敗戦ムードで焦りの浮かぶ十二使徒達の顔に明るさが戻った。 『見えない学校、僕の命を分けてあげるよ・・・だから、勇気を出すんだ! 頑張れ、見えない学校!』 悪魔くんの生命力が見えない学校に注がれる。 そして・・・生命玉が大きく輝き、魔煙を噴出!魔煙に包まれた見えない学校は幽霊船をすり抜けながら浮上した! 悪魔くんは激しい疲労に膝をつくが、強い声でいった。 「さあ、行くぞ!見えない学校!」 そして駆けつけたメフィスト二世と百目と共にメフィスト二世に乗り幽霊船に乗り込んだ! 船内のラルバ達はソロモンの笛の音を聞いた時から戦闘意欲がなくなり、悪魔くん達が船長室へやって来ても 襲い掛かる事はなく、ただうろたえ後ずさりするだけであった。 悪魔くんは東嶽大帝はラルバ達を利用して人間界を地獄に変えようとしているのだ、 そうさせない為に自分達が頑張るから 大人しく幽霊界へ帰って欲しい、と説得を始めた。 手下達は「あんな美しい笛の音を出せる奴が嘘言うはずないもんな。」と顔に似合わない芸術的観念な理由で悪魔くんの 言う事を信じ始めていたが、ただ一人船長だけは東嶽大帝との約束に固着し、 悪魔くんを倒そうと 必死に説得する悪魔くんの言葉を遮るように船長の三日月刀が振り下ろそうとしたが 刀を恐れず船長をじっと見つめる悪魔くんに殺気を殺がれた船長は霊魂の姿に戻り、悪魔くんの体内に入り真意を調べ始めた。 『僕を信じて・・ラルバ・・・!』苦しそうな表情を浮かべながらも悪魔くんは船長に必死に語りかけた。 やがて船長が抜け出し、悪魔くんの前に土下座し謝罪した。 「すまなかった悪魔くん、どうやらお前の言う事が正しかったようだ。」 何て切り替えが早い。 こうして実にあっさりと無血で和解が成立し、一日も早くラルバ達が安心して幽霊界にいられる世の中を作る事を約束 した後、幽霊船は何故船を襲っていたのかは口を閉ざしたまま幽霊界へ帰っていった。 その直後、事件が解決したのを見計らったようにファウスト博士、メフィスト老、そしてベルゼブブが 魔動カーに乗って やってきた。 無事一件落着したと分かるとメフィスト老はもう一風呂浴びるか、と楽な方につくのが得意技のベルゼブブと共に そのまま魔界谷温泉にUターンしてしまう。 「人の気も知らないで、暢気なもんだぜ、親父の奴!」と飛び去る魔動カーの後姿を見送りつつ呆れたように言う メフィスト二世だった。 そして骨休みも終わり、校長室に戻ったファウスト博士は悪魔くんからソロモン王の鍵について質問を受けた。 しかし、博士なら何か知っているのではないかと尋ねる悪魔くんに ファウスト博士は「しばらく一人にしてくれ」と 悪魔くんから背を向けた。 しょんぼりとした表情で悪魔くんが退出した校長室で、ファウスト博士は一人呟いていた。 「もうすぐ恐るべき秘密が明らかになる。 そしてその時こそ東嶽大帝を倒す事が出来るのじゃ、悪魔くん・・・。」 目次に戻る |
世間一般ではそろそろ正月ムードも終わりという頃、埋れ木家の朝食は今だ正月気分のモチだった。 そのシンプルすぎる朝食を前に百目が「もう飽きちゃったもん!」と居候の遠慮が全く感じられない抗議をする。 エツ子もそれに同調し、「たまには宅配ピザでも食べたいわ!」と埋れ木家にしてはハイカラなメニューを母に提案した。 埋れ木母はじゃあお昼はそれにしましょ、と言った後、百目に常の如く朝食に降りてこない息子の事を尋ねた。 百目は、悪魔くんは徹夜でソロモン王の鍵の事を調べているのだ、と一般人に理解困難な返答をした。 その為埋れ木母は「ホルモンの勉強なんか徹夜でしなくっても。」と見事に誤解。 更にエツ子が「ねね、ソロバンの王子かしら!」と誤解を飛躍させ、 それを縁側で聞いていた埋れ木父が「そうか、真吾はソロバンの王様かぁ。」と枡を片手にほろ酔い口調で一人 納得していた。 埋れ木家の三段とぼけ会話が行われているその上では、悪魔くんが本の山の中で究極の六芒星の秘密を解き明かすべく 研究を続けていた。 しかし、睡魔の猛撃の前に流石の悪魔くんも眠り込んでしまう・・。 そのままの姿勢で安らかな眠りについていた悪魔くん。 大あくびと共に爽やかな目覚めを迎えていると、「お目覚めかい?」という声が上から降ってきた。 目を向けると、机の上にメフィスト二世、床の上に幽子が座っていた。 「えへへ、寝ちゃったみたいだ。」照れ笑いを浮かべる悪魔くん。 幽子はそんなお疲れの悪魔くんにピクシー特製栄養ドリンクの差し入れを持参していた。 子供への差し入れとは思えないが、悪魔くんはこの心遣いに「助かるよ。」と感謝を述べ企業戦士さながらに一気飲み した。 小学生ながら堂に入った飲みっぷりです。 そして話は十二使徒達へと移り、象人が餅の食べすぎで寝ている事や、 ピクシーが見えない学校の検診を行っている事、 こうもり猫が本の山で高いびきをしている事など皆いつもと変わりがないという話題に花が咲いていた。 と、その時扉が開き、百目が両手にカップラーメンを持ち部屋に入ってきた。 早くも鼻をひくつかせラーメンの存在をキャッチしていたメフィスト二世は、「ラーメン!頂き!」と言うやいなや 破竹の勢いで飛びかかり、百目の手にあるままラーメンを食べはじめた。 「そ、それ悪魔くんの分だもーん・・。」という百目の抗議にも 「いいじゃないか、お客、さん、だぜ。」 と麺をすすりながら我田引水な理屈を言った。メフィスト二世も全く変わりはないようです。 その頃、貧太、情報屋、キリヒトの三人は空き地に突然出現した古びた洋館に潜入していた。 いいだしっぺはもちろん「もしかしたら凄いスクープが取れるかもしれないぜ!」と鼻息の荒い情報屋。 入り口は簡単に開き、三人は恐る恐る中に入っていった。 中は外装の荒れようとは打って変わりきちんと整備されていたが、 壁と廊下は金属で覆われ、更に通路の両側には通風口が設置されそこから蒸気が噴出し、まるで工場のような造りに なっていた。 この人家に有るまじきオプション満載の廊下を恐る恐る進む三人。 中ほどまでいくと突然、情報屋の姿が消えた! 廊下の真ん中に地下への階段があり、そこへ転がり落ちたのだ。 「でも変な家ですね。廊下の真ん中に階段があるなんて。」と言うキリヒト。 家でスモーク焚いている方が変わってます。 そのまま段が宙に浮いている階段を降りていくと広い部屋に着いた。 部屋の中央には巨大なプールがあり、そこ中には都市のジオラマが建てられていた。 三人がその精巧さに見とれていると、プールを巡航していたミニチュアサイズの戦艦、そして戦闘機が一斉射撃を開始した! しかも戦闘機を操るパイロットは、虫! その時、笑い声と共にタコのような生物が空中に現れた。 ぎゃーッ!と逃げようとするが、間髪入れず鉄のシャッターが閉まり、閉じ込められてしまう。 「驚く事はない。僕の名前は宇宙悪魔タコス。この館の主だ。」 姿にジャストフィットした名前をもつタコスは、怯える三人に無断侵入したかわりに悪魔の契約を結ぶよう要求した。 情報屋は「何だそんな事か。」と何の抵抗もなく署名しようとしたが、 貧太が「前にそれで酷い目にあってるんだ!サインしちゃ駄目だよ!」と体験者の重みたっぷりの台詞で制し、 「悪魔に魂を売ってたまるか!」と断固としてサインを拒否する。 その頑なな態度を見たタコスは、このままでは人類は滅びてしまう、自分と契約して悪魔化すれば真の平和を築く事が 出来るのだ、と脈絡無く平和論を唱え始めた。 先程砲撃してきた虫は、現在までの人類の進化過程を数時間で遂げる事ができる宇宙虫と言い、 この宇宙虫の行く先がどうなるか、自分達の未来を見てみるがいい、と告げたその時、 宇宙虫都市からシャトルが発進し、直後、都市は大爆発を起こした! これが自分達の未来だとは信じられない貧太達の横に、先程発進したシャトルが着地した。 そして中から小さなタコス達がワラワラと飛び出してきた。 タコスはこの子タコス達は後一時間あまりで自分と同じサイズまで成長してしまう。 そうなればこの屋敷では狭すぎるので貧太達がどうしても必要なのだ、と言った。 実は、タコス達は母星を失くした宇宙の漂浪者で、永住できる土地を探す途中、宇宙船のエネルギーが切れ、 地球に不時着してきたのだった。 そして地球では悪魔化した人間の脳に寄生しないと生きていけないという人間にとって危険極まりない体質だった為、 貧太達の脳に寄生しようと目論んでいたのだ。 結局人類の平和なんぞどうでもいいと言うのが本音じゃないのかと言う間もなく、 タコスは口から色とりどりのシャボン玉のようなものを貧太達に吹きつけた! そのシャボン玉は貧太達にまとわりつき、3つの大きな球体になって貧太達を包み込む! 貧太達は球体を破ろうとするが、ぐにぐにブヨブヨとゴムのように伸び、中から出る事ができない。 タコスはそれは霊球と言う球で、その中にいる者は霊と同じ存在となり誰にも見えなくなるのだ、 出して欲しければ契約にサインしろ、と人類の未来云々より最初からそうした方が早いんじゃないかというような方法で 脅迫しだした。 こうなっては手も足もでない。 「ううっ、おかあちゃ〜ん。」と情けない声を出す情報屋の横で貧太は契約にサインする事を合意した。 が、最後に両親に別れを言いたいから外に行かせてくれ、と巧妙に逃走の機会を作り、 この屋敷を出ると30分で生体エネルギーがなくなるので、それまでに帰らないといけないが、 ひとまず屋敷から脱出する事に成功した。 外に出た三人は、ボヨボヨと跳ねながらいつの間にかイニシアティブをとっている貧太の提案で 悪魔くんの元へ行こうとしていた。 「そんな事いったって、悪魔くんは魔法使いでも何でもない、ただの人間だぜ!」という情報屋に 本当の事を言う訳にもいかず「だけど他に方法が無いよ!」としか言えないまま、悪魔くんの自宅へやって来た。 玄関口では本当に昼食はピザらしく、埋れ木母が宅配ピザ屋に注文をしており、 その脇を通り抜け二階へ上がり、悪魔くんに助けを求めた。 しかし、流石の悪魔くんでも霊球は見えないようで、呼べど叫べど蹴り上げようと全く無反応だった。 三人の葛藤を知らない悪魔くんは、手元の資料を調べ尽くしたのでヨナルデが集めてくれているはずの本を調べようと メフィスト二世達と共にいつもの洞窟へ向かった。 訳の分からない二人と分かっている一人も後からついて行き洞窟に入ると、悪魔くんが魔法陣の前に立っていた。 「何が始まるんだ?」と言う情報屋に、貧太は口を閉ざしたままだった。 そんな中、悪魔くんはいつものように呪文を唱え、ヨナルデを召喚した。 貧太達の目前で煙と風が渦巻き、そしてヨナルデが大量の本と共に姿を現した! 「悪魔くんって、本当に魔法が使えるんだ!」驚きを隠せない情報屋。 「あの怪物は何者でしょう?!」 よりによって一番怪物らしいヨナルデの姿を見て当然の反応を示すキリヒトの台詞に、貧太は激しく言い返した。 「怪物なんかじゃないよ!悪魔くんの十二使徒の一人、ヨナルデパズトーリだ!」 そして十二使徒は悪魔くんを助ける十二人の悪魔で、メフィスト二世や百目もそうだ、と説明した。 情報屋は貧太がこの事を黙っていた事を責めるが、 「情報屋なんかに教えたら、次の日には学校中に広まってるじゃないか!」 とまさしく情報屋がするに違いない行動を指摘され、ぐうの音も出せなかった。 そして今まで悪魔くんの奮闘を見てきた貧太は、悪魔くんが十二使徒と共に世の中を混乱陥れようとしている黒悪魔と 命がけで戦っている事を熱弁した。 しかし、悪魔くんでも自分達の存在が分からないのならどうしようもない。 貧太と情報屋は互いの霊球をつつきながら責任の押し付け合いを始めた。 すると、霊球がぶつかり合って出来る色を見ることができる幽子が、霊球の存在に気が付いた。 そこで貧太は以前悪魔くんから教わった、モールス信号ならぬ悪魔信号を使う事を提案。 友人に悪魔信号を教えるという悪魔くんらしい奇抜な行いが思わぬ所で役に立ち、 少なくなってきた生体エネルギーを振り絞って信号を発信した貧太達は、今までの経緯を伝える事ができた。 悪魔くんが霊球から脱出する方法はないかとヨナルデに尋ねたその時、幽子が自分の故郷の祠にある紫水晶を使えば そこから出られる、と言い、早速メフィスト二世に連れられて自分の故郷へ出発した。 悪魔くん達は脱出方法は幽子に任せ、タコスの元へ向った。 「誰だ、そこにいるのは!」 驚くタコスにかまわず貧太達を悪魔化させる事を止めるように言う悪魔くん。 しかしタコスは耳を貸さず、霊球を吹きつけた! それをマントで防ぐ悪魔くんだったが、今度は子タコス達がワラワラと近づいてきた。 むやみに攻撃する事も、シャッターが閉まり、逃げる事も出来ず一歩下がる悪魔くん。 その時、そのシャッターをを豪快に吹き飛ばしメフィスト二世と幽子が駆けつけた! 意外な早さで幽子の里から帰還したメフィスト二世は、休む間もなく魔力 電撃掃除機を発動、 シルクハットの強力な吸引力で悪魔くんの周りの子タコス達を残さずキャッチ、スイッチポンで子タコスをポイ。 その間に幽子がかけより、手に持っていた紫水晶を悪魔くんに渡した。 そして紫水晶をかざし、床にへたり込んでいる貧太達の姿を見る事が出来た悪魔くんは 紫水晶で霊球を切り裂き、三人とも無事救出する事ができた! 喜ぶ悪魔くん達。しかしタコスが無理矢理寄生させようと子タコスを津波のごとく全員の上から覆いかぶせた! 子タコスに埋れる悪魔くん達を見ながら我々はこの星では人間の脳に寄生しないと生きていけないのだ、悪く思わんでくれ。 と呟くタコス。 しかしその時ソロモンの笛の音が響き渡った。 悪魔くんはソロモンの笛でタコスに語りかける。 『自分達のかけがえの無い星を失くしてしまった、君達の気持ちは分かる。 それは、宇宙まで混乱に巻き込んでしまう東嶽大帝のせいなんだ!』 悪事は全て東嶽大帝の仕業と確証の無いまま断言する悪魔くん。 『僕達は、皆が仲良く暮らしていける星を目指しているんだ。 だけど、現実にはこの地球に君達は住む事が出来ないんだ!』 丁寧な口調ではっきり拒絶する悪魔くんの真摯な説得が子タコスとタコスに通じ、 タコスは「分かったよ、悪魔くん。」と言った。 その時幽子の紫水晶が大きく輝きだした。 「おお!その石は、僕達の星のエネルギー石と一緒じゃないか!それがあれば宇宙に飛び出せるんだ!」 そして洋館の下から宇宙船が浮上し、 宇宙虫は何の意味があったのか分からないまま、タコスは多くの子タコスと共に永住できる星を求めて旅立っていった。 悪魔くんは飛び去るロケットに向かって必ず皆が平和に暮らせる星を作ってみせると約束を叫んだ。 そして「何か夢みてるみたいだな。」と、ほけっとしている情報屋とキリヒトに、 今回の件を含めて自分の事は口外しないよう頼む悪魔くん。 キリヒトは「神に誓って誰にも言いません!」と宣言し、情報屋も誰にも言わないと約束する。 しかしやはり情報屋は情報屋。 ぼそりと「こんな特ダネ、喋りたいのはやまやまだけど・・」 と早くも誘惑に揺れている情報屋に 「もし誰かに喋りやがったら、お前を動物に変えてやるぞ〜!」と必要以上におっかない顔で警告するメフィスト二世。 この迫力満点の脅しに「許して!絶対誰にもしゃべりませーーん!」と慌てて否定する情報屋を余所に、 悪魔くんは宇宙にまで影響を与える東嶽大帝の力に気を引き締めるのだった。 目次に戻る |